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ラ コリーナ日誌

営みのある風景へ(3)

Text : 事業部

  • #ランドスケープ
ラ コリーナ近江八幡のランドスケープアーキテクト重野国彦さんへのインタビュー。 最終回は、建築とランドスケープ、そして、未来の風景についてのお話です。※第2回目の内容はこちら。

■藤森先生との協働

ラ コリーナ近江八幡には水田もできる計画です。とてもユニークな風景になりそうですよね。
重野 そうですね。藤森先生が水田を描かれ大きな石を配置されているのですが、自分だったらこんな石は置けない…というのを“どん、どん、どん”と。大石とインパクトある建築、そして田んぼの水面(みなも)。稲の成長が四季折々に移ろい独特な風景、光景になると思います。
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8月発行の『ラ コリーナ』4号目にイラストが掲載されています。初めてみたときは目を見張りました。本当に見たことのない風景になりそうです。イラストは秋の様子ですが、春夏は水と緑ですね。
重野 稲の成長とともに季節の移ろいを大いに感じられるものとなります。春、水面に若芽が並び、風になびきます。そして夏の終わりから秋の初め、稲が実をつけ、色づき、収穫を迎えるまで、稲穂の海に大石が浮いてくる姿を想像しています。
美しいイメージです。冬はどのようになるのですか?
重野 冬の間も田んぼに水をはっておく冬期湛水を予定しています。自然栽培の土づくりですから、田んぼの生き物のすみかとなります。また、水面に八幡山が映り込むことで広がりが出て、冬の光を感じられる風景を想像しております。メインショップや本社などの建物も映り込み、空間に一体感がでると思います。
楽しみですね。この絵が現実になるかと思うとワクワクします。
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重野 藤森先生がお考えになるものをおさめていくことは、どれも刺激的でありがたいですね。自然との繋がりだけでは、何を作ったというわけではないものになるのですが、藤森先生とご一緒させてもらうことで、先生の“どん!”と突出した独特なものを、景観へと繋げていくことになります。そこが先生とやるときの僕の仕事かなと思っています。
自然と人の作るものの、繋げ役のような。
重野 そうですね、それもありますね。特にこんなにユニークなものはどう繋げていくか難しいところですが、やりがいがあります。
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■ラ コリーナ近江八幡の未来の風景

最後に、ここにはどのような風景が広がることになりそうですか?
重野 ・・・「営みのある風景」でしょうか。
自然とともに人が営む。里山のような風景ですね。
重野 この辺りの地域の方は常緑樹の里山に入り、薪や落ち葉を活用されていたのだと思うのですが。ラ コリーナ近江八幡では常緑樹の里山も落葉樹の里山も、そのどちらもあわせもつ雰囲気をいつの日か創出したいと考えています。常緑樹の林床の草花、落葉樹の林床の草花…。高木、中木、低木、山野草、地被類まで。この辺りに自生している植物を用いて、“少し昔にあったちょっとした美しい風景”を取り戻せると嬉しいです。そして最終的には、お会いして最初にうかがった想いでもある“山野草の庭”を作りたいですね。
素敵です。八幡山から繋がる同じ植生の森ができ、足元には山野草が季節の花を咲かせる…。どこか懐かしさも感じる心地よい里山が生まれるイメージですね。森が育ってくるのは何年後ぐらいになるのでしょう?
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重野 山野草を本格的に植えられるのは10年後ぐらいからですね。森になるのは20年後ぐらい。50年経てばすっかり森になると思います。そこから、あと50年、100年かけて、こちらで作った森と八幡山が同じような木々の構成になってくるかなという感じです。今は、木々は種から採取し、苗を作り、ポット苗を植栽し始めたところ。山野草は既にある大木の周りから少しずつ増やし、育てているところです。
なんとも壮大で、とても楽しみです。
重野 たねやさんには四季折々のお菓子があります。その季節感とつながる草花や風景、お菓子屋さんとしての営みとのつながりから空間を考えられます。やりがいがありますね。ようやく基盤造成を終え空間の形が見えて来ましたので、このプロジェクトに関わり始めた頃から一番やりたかった“お菓子と草花の歳時記、そしてその風景”も、再び考え始めようとワクワクしております。
th_IMG_0390   大きな丘や水辺を作るときにも、数センチの違いや微妙なカーブにこだわり現場でやりとりをされる重野さん。大きな視野と細やかな感性が、心地よくダイナミックな風景を生み出すのだと感じました。 ランドスケープが形をあらわしてくると、更地の時には感じなかった奥行きや広がりを感じ、周囲の美しさも際立ってくるようです。小さな種を大切に集め、周囲の環境と調和させながらゆっくりと育てていく感覚。とてもスケールの大きなお仕事です。 敷地を一緒に歩きながら、畑も監修されたりするのですか?とたずねたところ、「一年目なので、担当者が自由に考えてやるのが良いと思っています。人が育っていくことが大切なので」と重野さん。自然を相手にする方には、ゆったりと受け止める力、育つものを信じる心があるようにも感じました。 繋がりが生みだす“営みのある風景”。これからも、ずっと。