月間アーカイブ

カレンダー

2020年10月
« 8月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  
キャンディーファーム(たねや農藝), フェロー | 2014/07/02  14:37
Text : 事業部

ラ コリーナ近江八幡のベースキャンプとも言える、たねや農藝。建築設計をしてくださった京都大学准教授 小林広英先生へのインタビューです。

第四回目は、建物を作るプロセスと、設計アイデアについてです。 ※第三回目の内容はこちら。

■社長との対話でつくる建物

小林 建物の設計では、山本社長との対話で生まれるキーワードを手がかりに詳細設計を進めることが多かったです。

04_01

小林 私の志向としても、なるべくシンプルに、素材感を活かした設計を目指しました。一方、山本社長も、鉄はさびてもいいんだということを言われる。
小林先生も、そういった使い方は良いというお考えでしたか?
小林 はい。その感覚はわかります。普通ペンキを塗るところをあえてしない。そのような素材の扱い方や使う場所を考えながら設計しました。

21

小林 素材を活かす設計は経年変化の状況も評価するエイジングの作法です。勝手な想像ですけど、お菓子にも通じるところがあるかなと思ったり。
そうですね。うつりゆくもの、うつろうものに、美しいなと思う感性は、おそらくあるのではないでしょうか。自然を感じさせる、ゆらぎのあるものにも惹かれているように感じます。
小林 そうですね、いつも社長は「店舗みたいにするな」「きれいに作りすぎるな」と。そういう、打合せで出てきたキーワードを自分で再解釈しながら設計を進めました。

DSC_2687

小林 実際の素材選定では、アキムラ フライング・シーの中谷さんや西野さんと議論したプロセスも大きかったですね。インテリアを担当された匠プランニングの土井さんとの調整も重要でした。

23

04_03

■建物への不思議な工夫

小林 あとは、さっきのヒューマンスケールの話に関連していうと、アプローチは妻側だけこちらに向いてコンパクトに見えます。全体のボリュームはその後ろに隠れている。ちょうど森の中に小さな家が二棟あるような感じです。

24

遠くから見たときは、あえて、小さく見えるようにと考えて。
小林 建物に近づくにつれて全体が見えてくる。

25

小林 また内部空間の工夫としては、等間隔に配置された柱を少しずつずらしています。ほら、柱ずっとずれてるでしょ。
ずれてる?あ、本当ですね。

26

小林 あちら側が狭くてこちら側が広い。広い部分を見ることで全体的に広がりを感じることができます。多くの人が建物に入ると「思ったより広いですね」とおっしゃるのは、このような仕掛けがあるからです。
なるほど。中の空間を広く見せるために柱を…
小林 あえてずらしながら配置する。
はい。建物自体もカーブしていますから、とても複雑なことになっています。

_80A2259

小林 栽培棟の入口を見てください。入口の前に障壁がないでしょ。ずらすことで、正面がスカーッとしています。
扉はあくまでも真ん中なんだけれど、ということなんですね。
小林 機能的にもモノが入れやすいとか、視覚的にも抜けていて気持ちがいいです。
言われてみると、あっ、と気づくのですが。体感としては、なんというか、さりげないですよね。ごくごく自然で心地いいです。

th_4-1

小林 柱を真ん中に置いていたら、全然違うと思います。
おそらく、もっと窮屈でカチッとした印象になるんでしょうね。
小林 すごく固い感じになる。
そのさりげないのが、成功というかんじでしょうか。
小林 そうですね。でも、中谷さんや工事の方は、だいぶん苦労されたので、何きれいなことばっかり言って、と言われると思いますが(笑)。

 

※次回、最終回は、みんなで作った建物であること、そして、風土建築につながるお話です。お楽しみに。


38名の参加で945本の苗木を植えました。急な斜面は一苦労、なだらかな斜面はスピードアップで。晴天の下、皆で爽やかな汗を流しました。


今年初のどんぐりプロジェクト。376本の苗木を植えました。前回植えた箇所には、保湿と栄養を与えるバーク敷きも。バケツリレーの楽しい掛け声で、みんなのパワーが一つになりました。


キャンディーファーム(たねや農藝), フェロー | 2014/06/11  16:30
Text : 事業部

ラ コリーナ近江八幡のベースキャンプとも言える、たねや農藝。建築設計をしてくださった京都大学准教授 小林広英先生へのインタビューです。

第三回目は、地域資源との関係についてです。 ※第二回目の内容はこちら。

■地域資源の循環的利用 ~竹林の整備と建築~

小林 実はたねや農藝を設計させていただくときにお願いしたのは、裏手の竹林の整備とからめるような仕組みづくりをさせてほしいということだったんです。
最初からおっしゃっていたのですか。
小林 はい。それをやらせてもらえたら、ちょっとえらそうなのですが、やりたい、みたいな。
それはやはり…
小林 さきほど説明しましたように、現代社会における地域資源と建築との結びつきを考えるということですね。ここでは、竹の循環的利用と里山整備を施設運営の一部に位置づけるということです。

14

小林 このようなコンセプトをたねや農藝では実現できる可能性があります。バンブーグリーンハウスでも同じようなことを考えていましたが、一棟での竹材利用量はしれている。
はい。
小林 でも、ここでは実際の企業活動に取り込むことで、里山環境へのインパクトを有しています。
今まで鬱蒼としていた竹林が、まるで生き返ったようです。
小林 整備できていますでしょ。ちゃんと現実的に結びついてる。
はい。竹チップになったりして、大いに活用されています。
小林 そうです。チップはランドスケープを担当された重野さんのアイデアなんですが、あとは、トラクターの屋根付きシェルター、山野草や農作物の栽培棚などいろいろな場面で竹用途を考えています。

15

竹を使うというひとつのアイデアが、色んなところに結びついてきていますね。
小林 無理矢理じゃなくて、実際の活動のなかで結びついている。
繋がっています。
小林 個人的にもすごくやりがいがありました。建築デザインのおもしろさだけでなく、竹林整備と結び付けて実際の建物を設計できることは大きかったです。
それは嬉しいですね。
小林 はい、すごく嬉しいです。

16

地域とのつながりの中で

小林 山本社長が言われていましたが、今まで放置竹林の前を車で通り過ぎていた地域の人が、最近はきれいな竹林を見ながら歩いて通られるようになったとか。
作業をしていると、声をかけていただいたり。
小林 やっぱり、いろいろなところに影響していますね。
はい。いろんな広がりが。
小林 竹林の整備作業もたねやの従業員の方々にご協力いただきました。最初は手間取っていたのが、だんだんと熟れてくる。手を動かすことでいろいろな技術や知識が蓄積されていくように思えます。そのような活動を誘発する施設と考えたら、やっぱりすごく意味がある。この地域に建ってる意味が見えてきます。
深い。
小林 けっこう深いでしょ(笑)。
先生のお考えになっていることと、わたしたちたねやグループが、地域に根差して、土地に根差してやりたい、と想っていることが、本当に合致していますね。

19_100045

小林 私は知らなかったのですが、たねやでは以前から、どんぐりプロジェクトなどに取り組んでいたのですね。
はい。5年前からやってます。
小林 それも、地域の資源をもう一度利用させてもらうという点で同じような理念を感じます。
お菓子屋の域をこえて、いろんな方々と交流していきたい、という想いも、ここでは叶えられるような気がします。
小林 百菜劇場のハウスで農夫と間違えられたことから始まって… 何か不思議な感じがします。
そうですね。ルッキさんと小林先生がお会いされたとき、わたしもその場にいたのですが、バンブーグリーンハウスを見たルッキさんは、「とてもエレガントだ」とすごく称賛されていたのを覚えています。
小林 本当に、不思議なご縁です。

※次回、建物を作るプロセスと、設計アイデアについてのお話につづきます。お楽しみに。


キャンディーファーム(たねや農藝), フェロー | 2014/06/04  15:35
Text : 事業部

ラ コリーナ近江八幡のベースキャンプとも言える、たねや農藝。建築設計をしてくださった京都大学准教授 小林広英先生へのインタビューです。

第二回目は、たねやグループとの出会いと、設計テーマのお話です。 ※第一回目の内容はこちら。

■たねやグループとの出会い

小林 そんなことがあった後、たねやの会長さんがバンブーグリーンハウスに興味もっているからと言っていただいて。ラ コリーナ裏手の里山にある竹林も放置されているから、つなげてやったらどうやろ?ということで紹介していただいたんです。それで、お会いしてすぐ、「とりあえず、五棟作ってもらいましょ」みたいな話をされました。
え?
小林 いきなり初対面で五棟も作らせてもらえるなんて、本当にびっくりしました。何年もかかって三棟なのに、五棟まとめて作ったら、本当に里山放置竹林の整備につながるのではという期待感と、五棟一気にという初めてのことに、不安感が交錯しました。

07

小林 しかし、そうこうしてるうちに、2012年4月3日に滋賀県を襲った爆弾低気圧で、百菜劇場のハウスが飛ばされてしまったんです。
ありました、ありました。大変な雨や風でした。
小林 これはしまったなーと思ったのですが、とにかく至急復旧するのが大事だということで、もう一度作りなおしました。補強方法も改善し、今は大丈夫だと思います。なにか試行錯誤を繰り返して収斂される風土建築の発達過程をみる感じです。
なるほど。
小林 そうこうして、現場に来る機会があったときに、今度はたねやの女将さんから、「なんかえらい見事に飛んだらしいねえ」とか言われまして。「ああ、これで五棟終わりか…」とか思っていると急転直下、「ここの施設いっぺん考えてみて」と言っていただいた。これがたねや農藝の設計に関わるきっかけです。
そんな経緯があったんですね。
小林 ですので多分、ハウスに被害がなければ、今頃敷地の片隅でバンブーグリーンハウスを作っていて、たねや農藝の設計は別の方がされていたと思います。
すごい巡り合わせですね。
小林 ええ。すごい巡り合わせですよ。ルッキさんにお会いした。ハウスが飛んだ。提案を。みたいな話です。

■ヒューマンスケールな建物を

小林 最初はそんな始まりだったんですが、その後、設計条件をいただき、結構大きな施設であることがわかってきました。ですが、建設する敷地を見たり建物内での活動内容を聞く中で一貫していたのは、なるべくヒューマンスケールに抑えた施設のイメージでした。敷地になじみ自然と一体化するようなイメージです。
たねや農藝のある場所は、少し囲われたようなすり鉢状で、とても良い場所ですよね。
小林 しかし、1000㎡も超える建物を色々な形で納めようとしても、なかなか地形に馴染むような納まり方が見つかりませんでした。それと、屋外に山野草を置くスペースも考える必要がありました。

th_2-1_DSC_2227

小林 ところが、ある日、二つにポッと建物を割ったらどうかな、と思う瞬間があって二棟に分けたらスケール感がピタッときはじめました。そこから、地形に添わして若干緩やかにするとかやりはじめて。

11

小林 それと、農作業小屋での活動イメージを重ねながら色々と検討する中で、今のようなかたちになりました。
そうしてできたのが、この工房棟と、あちらの栽培棟ということですね。
小林 このスケールの建物であれば、真ん中にある柱がなくても十分もつ構造体を考えることができるのですが、構造部材もヒューマンスケールに抑えたかったので、あえて柱を立てることで木の柱梁寸法を小さくしました。

12

柱がなければ、例えばどのようなデザインになるということですか?
小林 例えば体育館みたいになるかもしれません。技術的には全く問題ありません。でも、ここではあえて大きな部材や複雑な構造形式を組み合わせるのではなく、柱を立てることで家みたいな感覚の寸法に近づけるようにしました。結果的に、柱の存在自体が全体的にも良いスケール感をもたらしていると思います。
ヒューマンスケールというのが、先生自身の中にもテーマとしてあって、ここにもぴったりきたということなんですね。

IMG_8448

※次回、地域資源との関係についてのお話につづきます。お楽しみに。


ページトップ