渡邉美和子医師 コラム 第1回『お菓子のある生活』2016/04/01更新

今月から、一般社団法人メディカルファーム代表理事 内科医である渡邉美和子先生の、コラム連載をスタートしました。
お菓子のある、健康的で豊かな生活をすごしていただくヒントやアドバイスを、渡邉先生に医師の目からご紹介いただきます。

コラムを担当させていただきます渡邉美和子です。
私は普段、予防に視点を据えた内科診療や日本の医療をよくするための医療事業に取り組んでいます。
「食」を良くすることはその中でも大きなテーマであり、心を癒す「たねや」のお菓子を、身体にも優しいお菓子としてより多くの方に喜んでいただくため、皆さんのご意見やご希望も生かしながら開発を進めたいと思っています。長い日本の伝統を守り続ける和菓子の素晴らしさと、身体に優しい食の知恵を融合させた新しいお菓子の役割に私自身も期待を寄せています。

渡邉美和子 プロフィール

北里大学医学部卒業。慶応病院で内科医として勤務し、その後は内科診療と並行して民間の医療研究機関で顧問医としての研鑽を積み、医療ビジネスのコンサルティングやクリニック経営に関わる。家庭医学書の総編集やウェブ上の医療コラム連載など講演、執筆多数。「安心で美味しい食の医療プロジェクト」として第14回・第16回日本抗加齢医学会学術総会や第88回日本内分泌学会学術総会、第24回乳癌学会学術総会、第34回日本肥満症治療学会学術集会でのお弁当を監修するなど近年は独特の食指導に力を入れている。現在はミッドタウンクリニック特別診察室長、一般社団法人メディカルファーム代表理事、一般財団法人東亜総研理事。

「安心で美味しい食の医療プロジェクト」で「大往生まで豊かな健康生活」達成を

日本人の三大死因に長らく「がん」「心疾患」「脳血管疾患」が挙がることを考えても、日々の生活習慣の見直しは「大往生まで豊かな健康生活」達成!のカギになることは間違いありません。
内科医として最先端の技術を含む様々な治療に携わって参りましたが、食生活習慣はどんな治療にも勝る基本であると実感しています。そして、日本の食文化には、美味しく楽しく活かせる健康への知恵がたくさん詰まっています。
今まで病院で行ってきたようなお仕着せの食制限、減量指示とは異なり、「美味しい」を第一に、現実的に気軽に実践できる食習慣を提案しよう、と始めたのが「安心で美味しい食の医療プロジェクト」です。
「たねや」では、長らく伝わってきたお菓子の伝統を大切にしながら、食材を吟味し、手間ひまをかけてその良さを引き出すことで「食べた方が身体に良いお菓子」を開発して参ります。皆様を笑顔にする、ほっこり美味しいおやつが、いつのまにか心身の健康につながる、「食の知恵」をお菓子を通じて皆様にお届けしたいと願っております。

「お菓子のある豊かな生活」で「健康を手に入れる」

「お菓子」と「健康」は対局にあるようなイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。私の診察室にも挨拶もそこそこに「先生、お菓子食べちゃったの。今日の検査結果は良くないと思う・・・」とがっくり肩を落とす患者さんが少なからずいらっしゃいます。私もちょっと前までは苦笑しながら「間食はやめましょうね。お菓子は甘すぎるからやめましょうね」と教科書通りに、いわゆる禁止指導をしていました。
でもある時気付いたのです。苦痛やがまんを強いる生活習慣で改善できる方はごく僅か、できたとしても長く続かないことも多いし、何より美味しいと感じる幸せ、豊かな気持ちをもたらす生活の楽しみを制限しての健康指導では本末転倒なのではないか…。
人生を楽しむこと、そしてそれを長く楽しめるためにこそ、健康が大切なのです。健康のために楽しみを犠牲にするのではなく、「楽しんで、且つ健康」を実現させることこそ、豊かな生活につながります。
この思いが、「安心で美味しい食の医療プロジェクト」の中でも「お菓子」をテーマにした取り組みに力を入れたいと考えるきっかけとなりました。そして「自然の恵み」としての食材を大切に、日本の食文化を菓子に織り込む「たねや」チームとのコラボレーションが開始となったのです。

「お菓子のある豊かな生活」とは

「食べた方が体によいお菓子」の戦略は、「お菓子が体に与えるマイナス要素」を取り除き、「健康維持にとって現代食生活で足りないと言われるプラス成分」を盛り込ませるというものです。
従って当初は糖尿病の原因となる血糖値を急上昇させる砂糖をいかに減らすか、代替できる糖分はないかなど、かなりの時間をかけて試行錯誤を繰り返しました。しかし、その中で数値では測れない砂糖の良さにも気付くようになります。様々な種類の糖が持つその「甘さ」は 数値化できますが、「脳」が感じる満足度は必ずしもその数値に比例しないのです。カロリーゼロの糖分なら安心してたくさん摂れると思いきや、いくら食べても「脳」が満足できなかったとしたら、お菓子を食べる「ほっこり感」「幸福感」が得られません。(心の充足感が得られない、という点はポイントで、カロリーゼロ食品によってかえって糖分摂取量が増えてしまうという研究報告※1もあります。)また、砂糖の役割は甘さだけではなく、しっとりした食感につながる保水力であったり、防腐作用であったりなかなか芸達者です。
血糖値の急激な上昇を抑えて糖尿病を予防する、糖尿病の方でも美味しく召し上がっていただける低糖質お菓子の開発にも力を入れる一方で、砂糖のチカラを上手に使いつつ、砂糖自体の吟味により風味を活かしたり、最小量で最大の効果を引き出すような他の食材との相乗効果を考えるなど、「砂糖量を減らす」だけに留まらない食の知恵を盛り込んでいきたいと考えています。

※1 出典:『人工甘味料と糖代謝 ―2000年以降の臨床研究から―』 斎藤 雅文, 堀 由美子, 中島 啓、日本栄養・食糧学会誌 Vol. 66 (2013) No. 2 等