柚子 | 2019年12月17日  09:31
Text : 臼井将史(原材料管理室)

11月下旬。柚子の収穫です!

愛媛県南予地方。ここは瀬戸内海の影響を受け、降水量が少なく乾燥した地域。冬は季節風が強く吹きます。

こうした寒暖差のある山間部で育った柚子は、皮が柔らかく、何と言っても香りがいいんです。

柚子は寒くなると黄色く色づいてきますが、今年は気温が高く色づきが遅れているようで、こんなことは初めてだそうです。
地球温暖化の影響でしょうか。
こうした気候の変化は農作物に大きく影響しています。

 

「桃栗3年柿8年、柚子の大馬鹿18年」
などと言われるほど柚子は成長が遅く、種から育てると収穫まで16〜17年はかかるそうです。
そのため、ほとんどがカラタチの木などを台木に、接ぎ木をして栽培しています。

枝をロープで下へ引っ張り、全体を広げるようにして栽培します。
こうする事で、日当たりも良くなり、木が高くなり過ぎないので収穫の作業がしやすくなるという利点があります。およそ3年くらいで1個、2個と実がつき、5年も経てば沢山の実がなります。

 

みなさんご存知でしょうか?柚子の木には鋭い棘があります。

この棘が柚子の実に刺さり、そこが腐ってしまいます。
手摘みで収穫するため、手や顔を傷付ける事も。

また、収穫と同時に剪定も行われます。
今年実をつけた枝には翌年実がつかず、そのまま放っておくと他の実が大きくなりにくいなど来年の収穫量にも影響が出るためです。

「枝を更新しないと木が古くなるにつれ、実はなっても汚い柚子になる」と、柚子農家の宮本さん。
きれいな柚子が評判です。

剪定した後の枝。これも放っておくと大変です。乾燥すると棘が長靴を突き破るほど硬くなります。
そのため、細かく刻んで木の根元へ撒き、土へと還していきます。

このように収穫作業もかなりの手間がかかります。

最盛期は朝早くから山に入り、1日で1トン800Kgほど収穫するそうです。

それでも、「筋肉つけると元気になる。動いているから元気」と宮本さん。御年88歳、まだまだ現役です。

柚子と言えば、もうすぐ冬至ですね。
冬至に柚子湯に入り、南瓜を食べれば風邪を引かないという言い伝えがあるように柚子は血行を促進し冷え性を緩和したり、香りにはリラックス効果も。

また、なんきん(かぼちゃ)、にんじん、ぎんなん、うどん…など「ん」のつく物を食べる事を「運盛り」と言って縁起を担いだそうです。

冬至は一番冬の寒さが厳しい時期ですので、柚子湯に入って南瓜を食べるというのは体を温め栄養を蓄えるという先人の知恵だったのかもしれません。
季節の節目を大切にするとともに昔ながらの冬の乗り切り方を取り入れて、私たちも元気に冬を乗り越えたいですね。

2019年の冬至は12月22日です。

寒さ厳しくなりますが、柚子とともに冬の季節をお楽しみください。


小豆 | 2019年11月26日  15:12
Text : 臼井将史(原材料管理室)

待ってました!小豆の収穫です。

10月末日、北海道十勝。

5月の種まき時期の干ばつによる発芽不良。日照不足、と思いきや猛暑続き…
この5ヶ月間も天候にも悩まされてきました。
近年、アンバランスな天候が続き、生産者の方も大変です。

天気とにらめっこしながら、その時その時のタイミングを見計らい畑に入って世話をします。畑の小豆も我慢の時期が長かったでしょう。よく頑張って育ってくれました。

枯れて葉が落ち、茎とサヤがカラカラに乾いたら収穫です。天候の影響などを受け、例年と比べ1週間〜10日ほど遅れました。

昨年は悪天候による不作で収量落ち、価格上昇…、と心配された小豆ですが、今年はきれいな小豆に仕上がっています。収量もまずまずのよう。
それでも「うまく作れるように頑張る」と農業を始めて15年の佐藤さん。頼もしい限りです。

ここから選別し磨かれ、ふくみ天平やどらやきの餡の素材としてたねやに卸されます。
大地の恵み、今年も感謝の中にいただきます。

丹精込めて作られた、北海道十勝の赤いダイヤ。
美味しくなれよと真心こめてお菓子に仕上げていきます。

 


 | 2019年10月24日  09:16
Text : 臼井将史(原材料管理室)

9月某日、宮崎県えびの市。
えびの市の南に広がる〈えびの高原〉を望む豊かで自然の宝庫としても知られる場所で育てられた作物、今が旬の“栗”の視察に行ってきました。

この日は太陽がジリジリと、非常に暑い日でした。
さっそく栗園へ向います。
まず目についたのは大きく育った栗。この栗園だけで260本もの栗の木が植えられています。

「今年は台風が直撃しなかったので初めのほうは比較的大きく育っているが、途中雨が続いたのでこれから後の栗は成長が悪いかもしれません」と生産者の尾山さん。
収穫が天候に大きく左右されます。これが農産物の難しい所です。

栗というのは、こうして自然に落ちたものを拾います。
食べごろを栗自身が教えてくれるんですね。
しかし、拾うのも大変。一日100㎏の栗を拾う事もあるそうです。

栗園の周りをぐるりと囲うワイヤー、これはイノシシ対策の電線です。
栗はイノシシの大好物。大切な栗が食べられないように守ります。

シーズン後は栗の木を一本一本丁寧に剪定します。これが一番大事な作業です。次の栗の実の出来具合に繋がるのです。
我が子のようにそれぞれの木の様子を見ながら、手塩にかけて育てています。こうした良い栗がとれるのも生産者さんのおかげです。

そして、収穫された栗は選別工程へ。
虫食いや割れている栗を取り除き、サイズ別に分けます。

コロコロ、コロコロ…。
回転しているブラシによって汚れなどが取り除かれピカピカに磨かれます。

生産者さんを始め、色々な方の努力の結晶とも言えるこの栗。
「栗月下」や「久里久里」などのお菓子となって、みなさんの元に届けられます。


小豆 | 2019年7月31日  11:02
Text : 臼井将史(原材料管理室)

5月、北海道では小豆の播種期(種まき)作業の真っ最中です。
餡の原材料になる小豆を育てていただいている北海道の十勝地方を訪問しました。
ここにたねやの契約農場があります。

成長時期の5月から10月に天候が安定し、日照時間が長い十勝地方は小豆の生育に最適な環境です。

小豆は連作に弱い作物で、同じ畑でつくり続けると落葉病などの病害虫が増え連作障害を起こします。
昼夜の寒暖の差が大きく、広大な畑と輪作体系が確立してる十勝は、小豆栽培に適した土地なのです。

小豆の生産者の一人、山田さんの畑に行くと、ちょうど農作業をされていました。
今年の作付面積は5町7反 (※1町=3000坪)。

「4月末から雨が降っていない。こんな事今までなく、風も強いので土埃がひどい」と山田さん。
その通り、目も開けてられないくらいの突風が吹き荒れ、砂嵐が巻き起こります。

小豆の種まきを見学しました。

農場では小豆の他に小麦やビート、大豆、スイートコーン、じゃがいもなど、さまざまな作物が育てられています。
この広大な土地が守られているのは農家の生産者の方々のおかげです。

同じ北海道とは言え、“小豆をどれくらいの深さに植えるか” など栽培方法がその土地によって違います。
全て、経験と知恵からなるものです。

生産者の方々と話をしていると、
「ただ作っているだけでなく、自分の作っている物がどのように使われているのか知りたい」
「美味しいと思ってもらえるとうれしい」というお話を聞くことができました。

熱意を持って、農産物が愛情を込めて育てられている事を肌身に感じました。
こうした思いをしっかり受け止め、全ての作物に感謝をし、美味しいお菓子を作り続け、多くの方に届ける事が我々の使命です。

そして7月。

5月の播種から、はや2ヶ月たちました。
心配していた雨も適度に降り、小豆は順調に育っています。

昨年は全国的に天候不順でさまざまな作物に影響が出ました。
北海道でも、雨と日照時間が非常にアンバランスな天候がつづき、生育不良や夏の大雨、台風の影響で畑に水が入り苗が流されたりと、収穫量が少ない状況でした。
生産者の方々はいつも天候に苦労されています。

どうかこのまますくすくと育つようにと祈りつつ、秋の実りを楽しみに待ちたいと思います。


よもぎ | 2018年7月9日  11:08
Text : 讃岐和幸(たねや農藝 永源寺農園)

みなさまによりおいしいお菓子をお届けするために、よもぎの香りの深層に迫る旅。
立命館大学薬学部教授の田中謙先生にお話を伺いました。田中先生のご専門は生薬学、天然物化学。
昆虫と植物が相互作用を研究し、品質の高い生薬をどうやって作るかなどを研究されているそうです。

昨年からスタートした共同研究

今回はご縁があってたねやのお菓子に使っているよもぎの香りについて研究をお願いしました。
当初はどういった印象を持たれていましたか?
田中 植物は自然の中で自分たちに優良な成分をつくります。それを人が健康に寄与するなどとして利用しているのです。植物は決して人のためというわけではなく、自分が生きるためにつくり出している。こうした実際の生理反応を我々がうまく利用するというところがあって、その一例として、お菓子の分野でどういう状態のものがお菓子に良いのか研究されていて、非常に興味がありました。

共同研究は2017年5月からスタートしました。
よもぎの香りは成長段階でどう変わっていくのか、茎の上・真ん中・下のどの部分の葉っぱのが良いのか、
収穫時期によってどう違うのかなど、異なった条件下のデータを収集するため、定期的によもぎを採取して、研究室へ送らせていただきました。

よもぎの香りについて具体的にどんな工程でどういったことを調べていただいているのでしょうか?
田中 この葉から成分を抽出して、ガスクロマトグラフィーという方法で分析しています。よもぎが春から夏、秋にかけてどういう成分の変化をしていて、経験的にたねやさんがこの時期のよもぎが良いとご存知のものがあって、その時はどういう状態にあるのか。今までの経験で蓄積されていた情報を科学的に解明、分析することで分かったことが、今後よもぎを生産する上で安定的によい規格のものがつくれる、といったことにつながっていく。そういうところに寄与できたら良いと思います。

昨年1年調べていただいて、分かってきたことは?
田中 春先からだんだん成分が増加し、秋になると収束して元に戻ってくるという一つのサイクルがある、ということです。去年の分析では、増えていくパターンが何通りかあり、よもぎの中でも性格があって、増えて減っていくという経過や最初のスタートポイントは似たところがありますが、それぞれ違う小部屋に向かって伸びていく。そういったことから、香りの成分として人が匂った時に違う感覚を受けるだろうということですね。

生薬とお菓子

たねやでは新たに“健康×お菓子”という分野でも開発を進めています。
先生のなかで何かお菓子づくりに活かせそうだという植物はありますか?
田中 生薬には、実は食材とかぶっているものが多いんです。ショウガ、ナツメ、サンショウ…
ただ、例えば薬に使う金時生姜は食材のショウガに比べて薬効成分は多いですが、非常に辛い。
味が大事なお菓子にとって、苦みや辛さが強いと難しいのではと思いますね。
それがうまくコントロールできれば高い機能を持ったお菓子がつくれるのかもしれないですね。
なるほど。とても参考になります。
田中 ナツメは大棗(たいそう)とも言われ漢方薬の30%含まれていますが、実としても非常に美味しい。また、ミカンは温州みかんの皮やダイダイの未熟な果実を漢方薬にするのですが、皮を使ってみるというのもおもしろいかもしれないですね。ただ、こういった生薬には食薬区分があり、何でも食品として使用できるわけではないので気をつける必要があります。

心の健康が体の健康に

よもぎの成分にはどんな特徴があるのですか?
田中 主なものとして殺菌成分があげられますね。
また、もぐさ(よもぎの葉の裏にある繊毛を精製したもの)がお灸に使われていることも有名です。
よもぎなどのキク科は、植物の中では進化が進んだ植物で比較的高活性の成分を多く含んでいます。

昔からよもぎ餅などにして食べられてきたことも、人々の知恵ですね。
田中 漢方では“心身一如(しんしんいちにょ)”と言いますが、心と体が一体で、心が健康である状態が体も健康にするという考え方があります。おいしいものを食べてハッピーになれば、それは体にも良い影響を与える。そういうことと関係しているのではないでしょうか。
その考え方にはとても共感します。よもぎは香りもとても良いですよね。
田中 漢方薬は煎じた時にかなり強い臭いがします。実は、あの香り自体が薬であって、あたたかく香りが立った状態で飲まないとだめなんです。臭い、香りというのは重要で、そこから刺激を受けて健康や自己免疫を立て直すことにつながる。そのなかでも、香りを楽しむというのはとても重要なんです。


今回田中先生から教えていただいたことは、私たちたねやが長く大切にしてきた“お菓子を季節と共にお届けする”ということと、不思議と通じるものがあると思いました。
季節をお届けするということは、旬の素材のおいしさをお菓子に込めるということ。それは決して味だけのことではなく、季節の香りや彩りをお菓子を通して感じていただくということです。
そして、その体験が人々の幸せにつながってほしいと、まさに“心身一如”を願ってきました。

お菓子づくりと科学。一見共通点はないように見えますが、私たちが持たない科学的な技術や技能に力を貸してくださるとても心強い存在であると、今回改めて感じました。こうした様々な分野のエキスパートにご協力いただき、これからも“よりおいしいお菓子”を追求する旅を続けていきます。

田中先生、学生のみなさん、研究室にお招きいただきありがとうございました。
これからもよろしくお願いします!

※よもぎの香りの旅(上)【滋賀・立命館大学】もあわせてご覧ください。