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ラ コリーナ日誌

人と自然が主役の建物です(1)

Text : 事業部

  • #キャンディーファーム(農藝)
ラ コリーナ近江八幡のベースキャンプとも言える、たねや農藝。建築設計をしてくださった京都大学准教授小林広英先生にインタビューをさせていただきました。熱く、和やかにお話くださる姿が印象的で、笑いもまじえながらの一時間。五回に分けてたっぷりお送りします。 第一回目は、小林先生のこれまでと、研究テーマから。

■地域資源と風土建築

たねや農藝が動き出しています。今回、建物をご担当くださった小林先生に、建物のこだわりや、先生の想いなどをお聞かせいただければと思います。
01
小林 どこから話せばいいかなと考えていたのですが…。まずは、たねや農藝の設計に至る経緯からお話しします。
はい。お願いします。
小林 私は、設計事務所に勤めたあとフリーで活動していたのですが、しばらくして、大学でお世話になった先生に誘っていただき、大学に戻ることになりました。研究室では地域資源と風土建築をテーマに研究をおこなってきたのですが、その主たる活動のひとつとして、アジア地域を中心とした少数民族建築の再建プロジェクトというのがあります。これまでに、ベトナム、フィジー、タイで実施してきました。
小林先生対話1
小林 再建プロジェクトでその建築過程をみていると、風土建築には三つの「地域資源」が必要なんだということを改めて認識したわけです。
”地域資源”…ですか。
小林 一つめが、「自然資源」ですよね。集落の周囲にある木や植物の材料を使ってつくる。二つめが、「人的資源」。これは、建物を建てるとき、特に構造体を組み上げるときにコミュニティの合力で作るんです。村の人をわぁーっと集めて。そして、もう一つが、「知的資源」。図面などなしで彼らは建てていくんですけど、在来の知恵や技術をふんだんに持っていてそれらを駆使しながら作って行きます。例えば図面ももっていないのにどのように寸法決めるかと言うと、全部身体のパーツで決めていきます。
すごいですね。
小林 柱と柱のあいだは両手を広げた長さの二つ分とかね。そういうマナーが全部、身体の中に記憶されています。
面白い。
小林 このように風土建築にある在来知の豊かさや自然との共生、地域コミュニティの力をみて、「地域資源と建築をつなげる」、というのを意識して、モノを作っていきたいな、作るのをサポートしたりしたいなという思いが強くなってきました。
06 (ベトナム少数民族 カトゥー族の伝統木造建築)  

■バンブーグリーンハウス

小林 そういうのもあって、地域に根ざす建築とはどのようなものか模索していたのですが、たまたま京都市内で空き地の有効利用に都市型農作物栽培を提案している農学部の先生がいて、それには栽培管理上、農業用ハウスが必要ということで、その上屋を君、デザインしてくれと言われまして。経験はなかったのですが、竹でつくりませんかとその場で提案しました。
なるほど。
小林 竹も、特に放置されているところから取ってきてやりたいと。それで、いっしょに共同してくれた中川竹材店の中川さんと、試作と検討を繰り返して完成させました。竹材の多くは、京都大学桂キャンパス内の竹林整備活動で取ったものを使っています。
バンブーグリーンハウスですね。
小林 はい。この一棟目の経験から、全国いたるところで社会問題となっている里山の放置竹林と、農業の活動とを結び付けるような、社会的意味のある仕組みが作れないかという思いが膨らんできました。その後、近江八幡西の湖の浮島・権座で活動される白王営農組合長の東さんから自分たちも作ってみたいという話をいただき、また、ラ コリーナの前で活動しているNPO法人・百菜劇場の根津さんからも共同建築を提案していただくなど、これまでに計三棟を完成させました。
04
小林 一つめは竹の構造体がきっちりできることを確認しました。二つめの権座では地域の人々が共同して自力で建設できるかやってみようということで、これもなんとかできました。三つめは、普通に作っても面白くないので、バンブーグリーンハウスを広めるためにワークショップでしましょうということで、農業新聞の方に頼んで紙面で募集をかけたところ、結構あつまっていろんな方々に建設の経験をしてもらいました。
発展的に広まってきたのですね。面白いです。
小林 そんなある日、百菜劇場の建設が終わって、たまたま手直しのために現場にいたところ、黒い服を着た人たちが沢山こちらにやってきたんですよ。うわ、なんだろうって思っていたら、「ルッキさんです」「えーっ!」という感じで舞い上がった状況でバンブーグリーンハウスの説明をしました。ただ、あちらは私のことを完全に農業関係者だと勘違いしていて、「農夫よ、君はなかなかいいセンスだね」みたいなことを言われたりしまして(笑)。
あはははは!(笑)
小林 全然会話がかみ合わなかったわけですが、その日はそれで終わりました。
06 05 ※次回、たねやグループとの出会いと、設計テーマのお話につづきます。お楽しみに。