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ものづくりの想いと精神(1)
フェロー, メインショップ〈草屋根〉 | 2015/02/12  15:56
Text : 事業部

たねやの店舗壁面を彩る大きな和紙を制作してくださった、和紙デザイナーの堀木エリ子先生。プロフェッショナルな姿勢が生みだす神々しい作品について、また、和紙と和菓子に通じる日本の精神性について、お話いただきました。オープン前、店内への設置作業の日に行ったインタビューを2回にわけてお届けします。
制作の様子設置の様子もあわせてご覧ください。

第1回目は、制作で意識されている大切なことについて。

■自然がひきおこす偶然性

今回の和紙は、西の湖の葭を漉き込み制作された、たいへん大きな作品です。紙漉きの現場も見学させていただきましたが、最も気にされたこと目指されたことは、どういったところですか?
堀木 あまり私自身がデザインし過ぎないということですね。こんなデザインをしてやろうと100%自分のデザインを目指すのではなく、そこに水の作用や繊維の特性が偶然性として30%くらい関わってくれるようにということを大事にしながら漉いています。自然の気泡の跡や、いろんなヨレなどもそのままにして漉きあげています。あまり人間が100%こうしようああしようっていう作為を持って作るより、少し自然に引き戻してくれるような、ズレが起こってくるほうが面白い。より自然に生かされた和紙になるように意識しています。

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自然の要素としては、水の動きも偶然性を引き起こしますね。
堀木 一番大事なのは、職人さんと私たちが、「せーの」という私の掛け声で色を流すところなんです。
とても印象的でした。
堀木 色を流すとき、水色を持っている人もいれば、緑色を持っている人もいる。陽だまりのようなクリーム色を持っている人もいます。そして、「せーの」の掛け声で流す、このタイミングが一番大事なんですね。どの要素よりも一番大事な偶然性が引き出せるのは、流し込みの工程による色のうねりだと言えます。また、糸も放り上げた放射線上にそっと落ちたその姿をちょっと引っ張って人間が修正するだけのような、できるだけ自然に従うようにしています。

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現場はものすごい緊張感でした。
堀木 はい、そうですね。やはりいつも紙を漉くときは瞬時瞬時が一期一会の時間ですので、集中力と緊張感を持って作業しています。
制作はいつも同じメンバーでやってらっしゃるのですか?
堀木 いいえ、変わる時もあります。私たちのスタッフは皆デザイン画も見ていますし、どのようなデザインを目指しているのかということは知っています。しかし、一緒に作っていただく職人さんたちにはデザイン画は一切見せていないんですよ。だから狙いが無い。そこが面白いんですね。職人さんが変わろうと、私たちのスタッフが変わろうと、大体半数はこうゆう風にしたいという想いがありながらやっていますし、あとの半数はこの色をここで持って「せーの」と言ったら流してね、と言われて流すだけです。ですので、そこで偶然性が引き出されるということなんですね。
なるほど。あえてそういう要素も入れていらっしゃるのですね。
堀木 はい。皆が狙うとろくな物にならないんです。手漉きというのは自然との関わりがとても面白いので、そういう偶然性がなければ機械で漉いたり印刷をしたものと同じになってしまいます。7割の人の作為と3割の自然の偶然性、うまくバランスが取れるようにしています。

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■和紙に漉きこむ近江の情景

今回の和紙は何層にも重なってできています。
堀木 5層からなります。その中に葭の細かい繊維が入っています。たねやさんから送っていただいた葭を煮て、撹拌して、中に入れています。
この土地の葭を使っていらっしゃると。近江八幡にはどのような印象をお持ちでしょうか?
堀木 ここは空気が清らかと言いますか、とても素朴な自然といった印象です。体験はしていないのに懐かしいという、不思議な、原風景的なイメージがありました。そういう意味では室内においても景色を作っていくという感覚がありましたね。それに、自然の中に存在する藤森先生の建築がとてもユニークなので、そういった建築の中に入るものとして、違和感のない色合いなどは、かなり意識して作っています。

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本当に、風景がたち現われている印象です。
堀木 私は皆さんから和紙を作っている作家と見ていただくことが多いのですが、私自身はあまり和紙を作っているという感覚ではありません。和紙を介して、こちら側の空気感や、向こう側の気配をどう醸し出すかというのが自分の仕事だと思っています。もちろん和紙そのもののデザインも大事なのですが、本当に大事なのは“こちら側の空気感”と“向こう側の気配”なんですよ。今回の和紙も、自然光が向こう側から入ります。その影がどう影響するかなど皆さんご心配いただいているのですが、影は時間帯でうつろっていくので、私はそれも面白いのではないかと思っています。

 

※次回、和菓子にも通じるものづくりの精神性についてのお話につづきます。お楽しみに。


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