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ラ コリーナ日誌
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まちに生きる!左義長まつり
Text : 國領美歩(広報室)
3月14、15日に、左義長まつりが行われました。
近江八幡の日牟禮八幡宮で行われる「左義長まつり」。
古くは安土城下で織田信長も踊りの輪に加わったとされる由緒あるお祭りです。左義長とは松明・ダシ・12月(赤紙)をひとつにしたもの。現在は、安土から移り住んだ八幡山城下の人々が町ごとに左義長を作り、13基の出来栄えを競うコンクールも行われます。
祭りの2カ月ほど前から、町の会所には夜な夜な老若男女が集います。
10代から70代まで、さまざまな年代が毎晩顔を突き合わせ、各町の特色を活かしたダシを作り上げます。五穀豊穣を願い、その年の干支をテーマに穀物や海産物などの食べ物を使うのが伝統ですが、「どんだけ綺麗に作っても、ムシ(干支の部分)が生きてなあかん」と言います。切干大根やスルメ、昆布などを張り付ける細かい作業を見ていると、少しずつ命が吹き込まれていくようでした。
作り方は一つひとつ教わるわけではありません。「見てたら自然と覚える」と言います。
父から子の世代へ、技はしっかりと受け継がれてゆきます。
連日作業は深夜まで続き、寝不足で体力も限界に近づきます。「どうしてこんなにも一生懸命になれるのですか」と尋ねずにはいられませんでした。
「小さい時から祭りがあるのは当たり前。考えたこともないなぁ」。祭りに熱中する親の姿を見て育ち、大きくなったら左義長をやる。そこに理由はなく、自然の流れ。当たり前に身近にあって、当たり前に続いていくのが左義長まつりでした。「大変やけど、基本はみんなまつりが好きってことやと思う」。会所に集まるみなさんの気持ちは一つでした。
「この2カ月で1年以上の濃い時間を一緒にすごす」と言います。
家族のような兄弟のような力強い関係性がそこにはありました。
「チョーヤレ、ヤーレ、ヤーレ…」威勢のいい掛け声と下駄の音、拍子が鮮やかに町中に響きわたる今日は祭りの日。
初日は「渡御(とぎょ)」といって、町によっては1トン近くあるダシを30人ほどで担ぎ、練り歩きます。肩や首がはれ上がっても、下駄の鼻緒が切れても、足を進めるのは待っていてくれる人たちがいるからです。
家の前を通る左義長を30年以上楽しみにしているご夫婦、母国にはない祭りの文化に魅せられたアメリカ人の男性にも出会いました。福祉施設では、縁側に椅子を並べた利用者のお年寄りが懐かしそうに歓声を上げていました。
為心町の表具屋立木米さんのところには今年もたくさんの“子どもら”が駆け寄り、手を握ってゆきました。
「おかあちゃん、いつもおおきに!」「冷たい手して。風邪ひかんといてな!」これからもずっと続いてほしい思うほど、心が温かくなる光景でした。
4年まえ、左義長まつりの前日に東日本大震災はありました。
宮司の決定で初日の渡御が取りやめとなると、「ケンカ(ダシとダシのぶつかり合い)」で大いに盛り上がる2日目、新町通りは「渡御」をすることを選びました。「ケンカはせえへん。やっぱり回ったほうがいいと思う」。当日を取り仕切る年長(若衆頭)の言葉に、みなが共感し、町中の無病息災を願って練り歩きました。毎年楽しみに、玄関先にいすを出して待っていてくれる人のために。
賑やかさや楽しさだけではなく、左義長に込められた何世代も受け継がれてきた想いを、若い世代はしっかりと引き継いでいます。
祭りに熱中し、勇ましくダシを担ぎ上げる大人たちは、いつの時代も子どもたちのあこがれ。子どもたちも大人顔負けに、赤紙を見たら血がさわぐようでした。もう立派に左義長まつりを体現していました。
日が暮れると、祭りはクライマックスへ向かいます。
ダシに火を放ち神にささげる奉火は、夜空に火の粉が舞うとても神秘的な儀式のようでした。
「やりきった」という達成感と心地いい脱力感、疲れと眠気が混ざり合う中、心はもう来年の左義長に向かっていました。
歴史や文化はこうやって受け継がれ繰り返されてゆくのだと、心を打たれました。
普段は静かな町屋造りの通りにも、古くから続く職人の町にも、脈々と流れる熱が湧き出たように、活気あふれる2日間でした。たねやグループの従業員の中にも先祖から近江八幡に住み、左義長まつりに情熱を燃やす者がいます。
そこには、近江八幡に生きる人々の誇りがありました。
いくつになっても熱くなれる、夢中になれるもの。それが左義長まつり。 祭りが生き、人が集う町、近江八幡。
私たちが目指すラ コリーナ近江八幡も、熱い想いと穏やかな関係で結ばれた人と人が集う場所になってほしいと願っています。
日牟禮八幡宮で行われた盛大な祭りとそこに集う多くの人たちの熱気を体いっぱいに感じ、近江八幡のこの地で商いをさせていただいているのだと、ありがたく誇らしい気持ちが溢れてきました。
4月14日(火)、15日(水)には、春の三大火祭り「八幡まつり」が日牟禮八幡宮で行われます。
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