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ラ コリーナ日誌
美しいヨシ原を守るために
Text : 國領美歩(広報部)
- #キャンディーファーム(農藝)
- #ワークショップ
2月1日、たねやグループの従業員によるヨシ刈りが行われました。
みなさんは「ヨシ」をご存知ですか?
ヨシとは、琵琶湖に多く自生するイネ科の植物。「アシ」とも呼ばれ、世界中の水辺に生えているそうです。
ヨシはその浄化作用によって琵琶湖の水をきれいにしたり、魚や鳥など生き物の住みかになったりと、琵琶湖をとりまく自然の生態系の中でとても重要な役割を担っています。
また、四季折々の表情を見せるヨシ原の景色は美しく、琵琶湖を眺めてみたときには、ヨシがとても大切な存在なのだと改めて実感します。
そのヨシ原を守るためには、手入れが必要です。古くから琵琶湖の湖岸に暮らす人々が行ってきました。
冬季にヨシを刈り、刈り跡一面を燃やして、また新たな芽が出る準備をするのです。近年では、ヨシ原のごみ清掃も定期的に行われています。
ラ コリーナ近江八幡の近くにも琵琶湖の内湖・西の湖へ続く北之庄沢があり、ヨシが群生しています。
人手不足などで管理が行き届かず、荒れてしまうヨシ原があると聞いた私たちは、美しいヨシ原を守るために少しでも行動に移したいと、グループ内でヨシ刈りを実施することにしました。
この日は、あいにくの曇り空。とても寒い日でしたが、おそろいの法被を着て、張り切ってラ コリーナ近江八幡を出発しました。10分ほど歩くと、ヨシ原が見えてきます。
2000年から16年にわたって北之庄沢のヨシ刈りやヨシ焼き、清掃活動などを続けてきた北之庄沢を守る会の西野平会長にご案内いただきました。
「この辺りのヨシは水質浄化にとても役立っています。事故のないよう、気を付けて刈ってください」と話してくださいました。
普段はお菓子を作っている職人やお店に立って接客をしている販売員、たねや農藝のスタッフなど約40人が舟をわたり、ヨシ地に入ります。
草刈機でヨシを刈り取る役割、長さのそろった綺麗なヨシを選別し束ねる役割、束ねたヨシを運ぶ役割…
それぞれ分担をして、声を掛け合って作業を進めました。
ヨシ原に一歩足を踏み入れると、まるで世界が変わります。
視界一面がスラリと伸びる黄金色のヨシに覆われ、とても不思議な気持ちになりました。
4〜5メートルを超えるヨシは、ただ真っ直ぐ、私たちの背の倍を優に超える高さまで伸びています。
こんなにも、植物の持つ生命力を強く感じたのははじめてでした。
茎の直径は1センチほど。中は空洞ですが思った以上に硬く頑丈で、刈り取った上を歩くと、靴底からズキズキと鋭さを感じるほどです。
あまりに長く、硬く、ヨシのあつかいに慣れない私たちは、刈るにも運ぶにも、何をするにも一苦労。
全て手作業で行われてきた昔の人々に、感服する思いがしました。
新たにできる本社には、ヨシの大松明を設置したいと計画しています。そこで、自分たちで刈った中から、松明作りのためのヨシを持ち帰らせていただきました。
ヨシは、よしずや夏障子などの工芸品、よし葺き屋根などに使われてきましたが、近江八幡のこの周辺の地域では、何より、祭りに欠かせないものだったといいます。それは今も変わりません。
人々の生活に密接に関係し、歴史と文化に深く関わってきたのが琵琶湖のヨシという植物なのです。
滋賀県に生まれ育っても、今回はじめてヨシ刈りをしたというスタッフはたくさんいました。
宮村晃司さんは、「ヨシは思ったより硬くて重かったけど、みんなでやったのですごく楽しかったです」とやり切った表情。
以前から琵琶湖の水環境保全に関心があったという草津近鉄店の宍戸亜由子さんは、「思った以上にあつかいづらく、たくさんの人手がいると実感しました。これからも積極的に参加していきたいし、こまめに電気を消して、なるべく省エネの生活を心がけていきたいです」と話していました。
参加者一人ひとりが琵琶湖のこと、自然環境のことなど、身をもって考えるきっかけとなった1日でした。
3月末、春の訪れとともに、ヨシは新芽をツンツンと出します。春が待ち遠しい今日この頃です。