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藤森先生とラ コリーナの物語
藤森先生, イベント | 2017/12/26  10:13
Text : 國領美歩(広報室)

12月17日、藤森照信作品集『La Collina 2017』出版記念「藤森照信が語るラ コリーナ近江八幡の世界」を開催しました。東京や名古屋、広島など全国から80人が参加し、藤森先生ご自身が案内する特別ツアーや講演、トークセッションなど盛りだくさんの1日となりました。

藤森先生がいつ、どのようにしてラ コリーナを思い描き、形になっていったのか。ラ コリーナがいかに予想外の思いつきや驚きに溢れているのかなど、今回初めて語られたことも満載!
後半には、先生のご盟友南伸坊さんも登場いただき、おもしろいお話がたくさん飛び出しました。

まずは、特別企画「藤森先生と巡るラ コリーナツアー」から!
限定20人で募集したこのツアーは、先生自らラ コリーナ敷地内に点在する建築やそのこだわりを紹介いただくというスペシャルなもの。なんと募集開始30分で定員に達してしまうほど、貴重な機会となりました。
藤森先生は「なんだか自慢するようで嫌だなぁ、恥ずかしいなぁ」と言いながらも、しっかりと引き受けてくださいました。

オカメ笹が一面に植えられた前庭に建つ「柿傘」からスタート。
ヨットハーバーをイメージした駐車場ができた経緯から、メインショップ「草屋根」の軒下では、ピロティ部分を大きくした理由も教えてくださいました。

「丸太のまま柱にしたのは今回が初めてなんです」と藤森先生。

普通は製材して使われることが多い木材も、先生は個性的な曲がりや節のある木本来の姿を生かしています。ラ コリーナの随所で見られる栗の木の丸太のままの柱は、その優しい肌質がとてもあたたかな雰囲気をつくり出しています。

カステラショップ「栗百本」では、「私は軒が低いのが好きでね、ここでは好みを出しています」とのこと。参加者のみなさんは興味深そうにメモをとったり、「実は、失敗はたくさんあるんです」という先生のユニークな発想に思わず笑いが広がったり、終始楽しい時間でした。

今では多くのお客さまが写真を撮るスポットとなっている「土塔(どとう)」を指差しながら、
「これは本当にびっくりしました。若い娘さんがインスタグラムとかいうのにあげるのにこんなに写真を撮るなんて…」と先生。「かわいい」と言われるのは複雑な気持ちなんだそうです。
世代を超えて多くの人を引き寄せる藤森先生の建築は、本当に不思議な魅力を持っているのだと感じます。

「屋根や岩の上の木は何ですか」という参加者からの質問には、「松」と答えながらも「本当は槙(まき)の木が植えたかったんですが、枯れちゃってね」と藤森先生。
「松は元気に育っているけど、これも農業部門があるたねやさんだからできる」と話してくださいました。
今では本社「銅屋根」のエントランスにのみ、先生が好きな槙の木が植わっています。


ツアーの後は、いよいよ講演の時間。会場は藤森先生の登場を楽しみに待つみなさんで満員でした。

たねやグループが藤森先生にラ コリーナの設計をお願いしたのは今から5年前のことです。
「“La Collina(ラ コリーナ)”イタリア語で“丘”というのが、唯一私に伝えられたコンセプトでした」
ラ コリーナができる前のお話から始まりました。

設計当初のスケッチ見ると当時のことが思い出されるようです。

「丘っていうから、まず屋根全体が草というのを思いついたんだけど、半分くらいは経営者はやらないだろうと思っていたんです。普通の人は世の中にないものはリスクがあってやりたがらないから。そう思って社長に出したらオッケーだったんです」

いくつかのスケッチをさかのぼると、中には実現しなかったものもあります。

「当初ずっとあったのは保育園をラ コリーナに移してくるという計画です。ぼくが(以前の)本社にはじめて行った時、工場の一角に立派な保育園がありました。そこに社員の子どもや社長の子どもも入っていたというから、この会社は普通じゃないと思ってね」

保育園の他にも、イチゴ農園を備えたショップやチョコレートショップの構想があったのだとか。
今のラ コリーナになる前、先生と共に夢を描き、それを一つ一つ形にして行った軌跡が伝わってきます。

「栗百本は私の夢の一つ、室内に向こうが見えないくらい柱を立てた空間をつくりたいというもので、建築の中で柱は少ない方がいいという原則の反対をやっています」とのこと。
「すごい急斜面のクマがいる山に入ったんだけど、見事にどれが栗かわからなくてね」と、先生はたねや社長山本も一緒に栗の木を求めて木曽の山へ入った時のことも、懐かしそうに話してくださいました。
※当時の日誌はこちら(1)(2)

先生が好んで使われる栗。栗はお菓子の材料として、私たちたねやグループも古くから大切にしてきました。
「栗の木」と「栗の実」。先生ご自身もおもしろいつながりを感じたそうです。
「栗の木はなんとなくカステラの色をしているし、とても気に入っています」

「ぼくは何かに似てくると必ずやめるんですよ。それはずっと歴史をやって来たからこそ、どの国のどの建築にも似たくないというのがある」

どうして藤森先生の建築がこんなにも唯一無二の個性と魅力を放つのか、理由はこの信念のなかにあるのではないかと思いました。


次はイラストレーターの南伸坊さん、たねや山本、進行役に今回の作品集のクリエイティブディレクションをしてくださった丹治史彦さん(信陽堂編集室)を迎えたトークセッションです。
共に路上観察の活動をされているご盟友・南さんは、さすがの息のあったトークで会場を盛り上げてくださいました。先生もとっても楽しそうです。  ※関連日誌「ラ コリーナで路上観察!?」

南さんによると、路上観察の時、藤森先生は汚い波板トタンばかりを写真に撮られていたそう。
建築業界では最も安物とされるトタンですが、一般の民家で修理のために継ぎ足されている様子が藤森先生の発想の元となったのだといいます。

「工業製品も風化すると、なんとなく自然に近づいてくる。時間の魔術ですね。時間は非常に不思議な働きを人工物にあたえる。それがトタンはもっとも顕著なんです」

たねやグループ本社「銅屋根」にも採用されている波打つ銅板葺きの屋根につながるエピソードは、とても興味深かったです。まさかトタン屋根とは!   ※関連日誌「銅曲げワークショップ」

長年、藤森先生の建築作業を手伝ってこられた南さんならではの珍エピソードもお話いただきました。
各方面で著名な方々が原始的な建築作業をされてきた様子を想像すると…なんともユニークです!

藤森先生から山本へ一番最初に提案されたのは、屋根一面に草の生えた建物のスケッチでした。

「ぼくは今まで一度も聞いたことがないんだけど、あれ(スケッチ)を見た時に、よくあれですぐにやろうと思いましたね」先生の問いかけには山本も会場も大笑い!やはりそこ、先生も気になっていたのですね!

「先生にお願いする前に海外も含めいろんな方に提案していただいたんですが、格好いいけど何かワクワクドキドキしないんです。でも、先生のはむちゃくちゃドキドキするんですね。本当にできるんかなぁというものが、実際にできていくんです。それがすごく楽しい」と山本。

メインショップの漆喰(しっくい)の壁には山本や従業員も参加して炭を貼りました。※当時の日誌はこちら
「あまりに人それぞれで本当に大丈夫かなと思いました」と振り返る山本に、
「実は大勢でこんなに大量にやったことはなかったから、はじめてやってみて途中でぼくもちょっと心配になってきたんだよ」という先生からの愉快な告白もありました。

ラ コリーナに関わってくださった職人さんたちについても、お話がありました。

「職人はそうとう優れた人たちでした。私が基本的な考えを示して、できない場合は代わりのやり方を示してくれる。それはとてもうれしかったですね。いちいち言わないけど、ものすごく手間もお金もかかることをやってくださって私自身学ぶことがたくさんあった」

作品集『La Collina 2017』には、そんな職人のみなさんのインタビューも収録しています。

最後は作品集を購入いただいた方に、先生からサインのプレゼントが。お一人お一人に心を込めてサインしてくださった先生に感謝の気持ちでいっぱいです。

5年前ラ コリーナの構想をお願いしたときから、藤森先生は本当に何度も近江八幡を訪れてくださいました。その度に斬新なアイデアをあたたかみあるスケッチで提案してくださった藤森先生。
私たちはいつも驚き感動しながら、ともに考え、つくり、先生に導いていただきました。
山本は言います。「藤森先生に出会わなかったら、今のラ コリーナはありません」

「建物をつくること」と「お菓子をつくること」は一見まったく違うようですが、「ものづくり」に対する姿勢は共通しています。他ではない“自分の中”から湧き上がるものを表現し形にすること、細部まで妥協しないこと、何より自分が楽しむこと。だから周りのみんなが楽しいということ。
先生は多くのことを、その姿で教えてくださいました。

藤森先生とラ コリーナの物語を少しでも知っていただきたいと思いこのイベントを開催しました。

藤森先生、快く引き受けてくださり本当にありがとうございました。
私たちたねやグループ一同は先生のことが大好きです!


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