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ラ コリーナ日誌

営みのある風景へ(1)

Text : 事業部

  • #ランドスケープ
ラ コリーナ近江八幡では、自然と人が寄り添う空間づくりが進んでいます。 ランドスケープアーキテクトをご担当下さっている重野国彦さんに、具体的な計画から未来の風景までたっぷりお聞かせいただきました。10年、20年、いえいえ、50年、100年先の未来を見据えながら計画は進んでいます。インタビューを3回に分けてお届けします。 第1回目は、たねやとの出会いについて、そして、ランドスケープについてのお話です。

■北海道と近江八幡

本日はありがとうございます。重野さんは北海道でたくさんの経験を積まれご活躍されていますが、たねやとはどのような出会いがあったのですか?
重野 2012年の夏、「北海道ガーデンショー」というイベントに、たねやさんの会長と女将をご案内させていただいたのがはじまりです。私は以前の職場で「十勝千年の森」の設計に携わっており、北海道ガーデンショーはそこを会場として開催されました。招待作家として招かれたイギリスのガーデンデザイナーから設計/施工を任され、自分としても初めてショーガーデンを施工する機会となりました。
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その北海道ガーデンショーで、会長と女将のガイドをしてくださったのですね。
重野 はい。私は滋賀県安土の出身なので、小さな頃から特別な時にはたねやさんのお菓子がありました。県外へ出てからも、滋賀県って何が有名?みたいな話になると「琵琶湖とたねやさん」と紹介していたぐらい、たねやさんを滋賀の誇りに感じていました。
遠く離れた土地で故郷の二人と。
重野 お会いしてすぐ「たねやさんの会長をご案内できるなんて光栄です」とお伝えすると「たねや知ってるの?」と、話になりまして。「滋賀安土の出身です」と言うと、とても驚き、喜んで頂きました。そして、まだガーデンを案内する前に、お二人から「滋賀へ戻ってきなさい」と。「今、近江八幡にこういうものを作ろうとしているから、来てください」とお言葉を頂きました。驚きを通り越して、状況も理解できずに居たのを今でも思い出します。そこから1時間半ほどガーデンを案内させていただいたところで、会長から再び、北之庄の構想、熱い想いをお聞きし、「一度現場を見に来てください」と言われました。後に“狐につままれる”とは、あの時のことを言うのだなと感じた程、今振り返っても信じられない一日でした。
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すごい出会いですね。その後、近江八幡へはすぐに来られたのですか?
重野 いえ。ご案内させて頂いただけでありがたいことでしたし、全く信じられない気持ちで。本当に行っていいのかな?と思っていました。ですが、せっかくのお言葉でもあったので、実家に帰省する際、連絡だけはと思いご連絡させていただきました。その時はご都合が悪くお会いできなかったのですが、翌年の春、改めて来させてもらいました。
2013年の春ですね。
重野 その時はじめて社長にお会いして、これまでやってきた仕事や今の仕事への取り組み方を説明させて頂きました。すると社長もすぐに「よろしくお願いします」と。家族の基盤が北海道にありますし、大きなプロジェクトであり一人で出来る規模でもないため、「一度、北海道へ戻り検討させてください」とお伝えしました。しかし、その場でどんどん話が進み…、また“狐につままれる”体験となりました。
あはははは。そんな心構えで来たわけではなかったと。
重野 そうです。故郷のために何かお役に立てることがあったら良いなと常々思っており、景観については何かしらアドバイスさせていただけるようなことがあるだろう、ぐらいにしか考えておりませんでした。仕事としては全く思いもよりませんでした。
急展開ですね。
重野 はい。お二方とも即決でした。会長も速かったですが社長も速くて驚きました。即決すぎて現実感もすぐには湧きませんでした。ただ、この規模は私一人で担える規模ではないですし、北海道の仕事もありますので、責任をもって出来る体制が整えばお受けしたい、という感じでスタートしました。既に工事も進んでおりましたので、たねやさんの想いを感じ取り、理解しながら、現場と計画に追いつくのに精一杯な毎日でした。
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■ランドスケープの「繋がり」と「流れ」

今では計画地全体のランドスケープをみてくださる、なくてはならない存在です。景観を設計するときは、どのようにイメージを作られていくものなのですか?
重野 ここには八幡山と水郷があって、それらの関係がここで繋がる、というのが正しいあり方だとイメージしました。今はこの計画地と県道で隔てられていますが、八幡山の稜線の形を図面や現場で確認して、きっと昔はこう続いていたのだろうとか、すでにある丘を繋げるにはこんな流れだろう、ということを考えて決めていきます。
なるほど。
重野 あとはバランスというか。敷地内に丘を設けているのですが、これがあるかないかで空間が変わってきます。現場で想像しては図面に描き、また現場で考え、また違った見方から考えたりと、何度も現場を歩きます。何度も繰り返すと、背後の山の連なりと敷地内の丘の形がスーと繋がるような、自信の持てる配置となり繋がっていきます。
周辺環境との関係性で。
重野 はい。周りの風景を取り込んでくるように。たねやさんが八幡山の麓の竹林を整備されていますが、竹林が敷地の中に入ってくる場所も作りたいなと考えています。そうすると、道を挟んでパキッと分断されるのではなく、森も竹林も両方が入り込んできて繋がってきます。そういう繋がりが景観となってくるので、繋がりを大切に考えています。
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重野 ここは八幡山を背負っていて、手前に水郷がある。やはり敷地内だけで完結するよりも、もっと周りを取り込んであげた方がいいと思います。庭には、遠景・中景・近景と、自分の庭だけではなく遠くの山、お隣の木々まで景色として取り込むという見せ方があるのですが、そういう基本的なことを踏まえつつ、さらに、見え方だけでなく、植生や動物もつながると良いなと考えています。何か特別な、突飛なことをしようというのではなくて、なるべく馴染んでいくこと、もともとの風景、風土が残してくれているものを見つけるような感じで考えております。
素晴らしいですね。ここだけを好き勝手したらいいというのではなくて、ここを良くするためには繋がりが重要だろう、と。
重野 そうです。その繫がりを強調したり、馴染ませたり。私は「繋がり」と「流れ」というのをどの設計でも考えているのですが、それらを上手く調整する感じですね。それに、もともとある自然に勝るものはないと思ってやっています。本当は周りの山や水郷の方が素晴らしいのです。でも、皆が皆、そういうところに出向くかというとなかなか行かない。だからこそ、ここへ来て気づいていただきたいなと。
ここの良さ。
重野 はい。ここ、ラ コリーナの良さに気付いていただいて、もっと周りの繋がりある風景へも足を延ばしてもらう。そういった感覚や思いを将来、ここから感じて頂けたらと思い、取り組んでおります。
th_IMG_5859 ※次回、ラ コリーナ近江八幡での様々な取り組みについてのお話につづきます。お楽しみに。