カカオの旅【ベトナム】
カカオ | 2015年6月26日  09:08
Text : 原田誠也(クラブハリエ チョコ工房)

みなさん、こんにちは。
今回の素材をめぐる旅は、クラブハリエ、チョコ工房の原田誠也がベトナムのカカオをレポートします。

カカオの産地というとアフリカや南米を思い浮かべることが多いと思いますが、カカオベルトと呼ばれる北緯南緯20度以内の、高温多湿地帯でカカオは栽培が可能で、近年、インドネシアやベトナムなどの東南アジアもカカオの産地として注目されています。

6月中旬、ベトナムを訪れました。

1

ベトナム最大の都市、ホーチミン市から車でベンチェ省に向かいます。
ホーチミン市は人口800万人の大都市。主要な交通手段のバイクは600万台以上あるそうです。
いつまでも続くバイクの流れに目を奪われます。

2

車に揺られること約2時間、カカオ農園のあるベンチェ省にやってきました。
メコンデルタと呼ばれる地域で、中国、ミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナムを流れるメコン川の河口にあたり、網の目のように無数の三角州が形成されています。
上流から流れ着く肥沃な土砂は、世界最大の穀倉地帯を生み出しています。

3


カカオの農園にはメコン川から水路が引かれています。
高温多湿な環境とメコン川の肥沃な栄養分がクオリティの高いカカオを生み出します。

4

カカオやヤシの木から落ちた葉も、土の湿度を保つのに役立ちます。

5

こちらの農園のご主人ヴァンさんです。
カカオ以外にもココナッツやバナナ、グレープフルーツなど多くの果物を栽培されています。

6

カカオの実は日陰を好むため、背丈の高くなるヤシやバナナを一緒に育てて、直射日光からカカオを守るのだそうです。

7


カカオは枝だけでなく、幹にも直接実の成るユニークな植物です。
チョコレートに人一倍思い入れの強いグランシェフ、小野林シェフが感慨深くカカオの木を見つめていました。

8

木にぶら下げている竹の筒はアリの巣です。
アリはカカオの実につく害虫を食べてくれるのです。

9

ベトナムのカカオはトリニタリオ種とよばれる品種で、独特の香りをもつクリオロ種、チョコ独特の苦みの強いフォラステロ種を交配し、双方のいいとこ取りをしたハイブリッド種です。
カカオの実を割ってみます。

10

中にはパルプ質に包まれたカカオ豆が30~40粒ほどぎっしりと詰まっています。

11

生のカカオ豆は、少し粘りがあって、ライチに近い爽やかな味がしました。
ベトナム産カカオからつくられたチョコレートもまた、フルーティな酸味が特徴です。

12

13

ヴァンさんが、農園のココナッツジュースを飲ませてくれました。
うだるような暑さと湿気の中を数時間歩いてきたので、これは格別の美味しさでした!

14


収穫したカカオの実は、1週間程度熟成させます。

15

カカオの実から取り出したカカオ豆は、発酵過程に入ります。

16

この木の樽の中で麻布を被せ、5日間発酵させていきます。

17

これが1日目。

18

これが二日目。発酵が進んで熱をもち始めます。

19

発酵を促進するために、かき混ぜます。
かなりの熱を発していて、ワインのような強い発酵の香りが漂います。

20

発酵5日目。発酵がかなり進んで濃い色になりました。

21

木の樽で発酵させたカカオ豆は、天日に干して乾燥させます。

22

ここまでくると、チョコレートの味に近づいてきました。
苦みの中に、ベトナム産カカオの特徴であるフルーティな酸味がしっかりと存在しています。

23

乾燥を終えたカカオ豆は麻袋に袋詰めされます。

24

乾燥を終えたカカオ豆を半分に割って発酵度合いを確認します。
ここからチョコレートになるまでの間も、ゆるやかに発酵が進みます。
それを逆算して発酵の程度をコントロールするそうです。

25


カカオの袋にCACAO TRACE (カカオ・トレース)という文字が見えます。
ここピュラトス・グランプラス・ベトナムでは、カカオを栽培する農家への技術支援、品質向上、次世代育成、経済的支援などのためのサスティナビリティ・プログラム【CACAO TRACE】を実施されています。

フェアトレードなどの生産者支援活動の中でも、一歩踏み込んだ活動として私たちも評価しています。
そして、ベトナム産100%の高品質なチョコレートをベトナム国内で製造されています。

クラブハリエでも2015年のバレンタインで、ベトナム産チョコレートを一部の商品で使わせていただきました。
こうして、カカオの栽培から加工まで見せていただいて、ますますカカオの可能性にとり憑かれました。

来年のバレンタインでは、どんなチョコレートが生まれるか、どうかご期待ください。

26


カカオの視察を終えて、夕刻、ホーチミン市まで戻りました。
更にバイクが増えた気がします。

若い人が多いなと思っていたら、それもそのはず、ベトナム国民の平均年齢は28歳だそうです。
そこには過去の戦争による暗い歴史が理由としてあり、今でもその爪痕はいたるところで垣間見えます。
それでも、過去を乗り越え、目を輝かせながら前に向かって生きるベトナムの若者たちを見て、この国の明るく平和な未来を願わずにはいられませんでした。

27

お菓子は人々を幸せにすることができると僕は信じています。
そこには、お菓子ができるまでに携わる人たちの幸福も含まれるべきだし、そうならないといけない、と強く思ったベトナムの旅でした。

28