政所茶の旅(上)【滋賀・永源寺】
新素材に出会う旅 | 2017年10月3日  10:30
Text : 小野林範(クラブハリエ 八日市の杜)

みなさん、こんにちは。今回の素材をめぐる旅の舞台は、滋賀県東近江市永源寺(えいげんじ)。
今や“まぼろし”とも言われる特産のお茶「政所茶(まんどころちゃ)」について、クラブハリエ 八日市の杜セクターシェフの小野林範がお伝えします。

5月19日、私は店舗スタッフと共に滋賀県東近江市、旧永源寺町の東部、政所(まんどころ)と呼ばれる地域に向かいました。この日は、ご縁があって「政所茶」の茶摘みを体験します。山道を進む道中、想像以上の雄大な自然とおいしい空気に期待は膨らみす。

今年1月、「八日市の杜」のオープン以来、私がお客さまの目の前でデザートを仕上げお出しする「シェフズカウンター」では、地元特産の素材を積極的に取り入れてきました。その中の一つが、「政所茶」です。

以前からその噂は聞いており、素材の提供をお願いしたのが山形蓮さん。2014年から地域おこし協力隊として、そして現在は「政所茶縁の会」という団体で政所茶を後世に残し、伝える活動をしている生産者です。

政所に到着すると、さっそく山形さんが茶畑(山形さんは“ちゃばた”と呼んでいました!)へ連れて行ってくれました。民家の間の小道を抜けると、鮮やかなグリーンが見えてきました。
家々の間に点在する茶畑は、この地域の人々とってお茶がいかに身近で密接な関係だったかが分かります。

「昔から、ここの人たちの生活にはなくてはならないものだったんです」と山形さんが教えてくれました。

茶畑の一角では、地元東近江市の八日市南高校の生徒さんが作業をされていました。お話を聞くと、「玉露をつくるために、茶葉にこもをかけます」とのこと。詳しく教えてもらいながら、お手伝いさせていただくことにしました。
玉露とは日本茶・煎茶の一種で、日光を遮ることで茶葉に含まれるテアニンという成分を増やし、旨みの強いのが特徴。以前は政所地区でもつくられていましたが、より手間と労力がかかる玉露生産は数年前に途絶えたといいます。そこで、今回復活に向け、高校生のみなさんが奮闘されていました。

今回かぶせる「こも」は、藁(わら)を手編みした昔ながらのもので、生徒のみなさんが約2年をかけて約100メートルを編み上げたそうです。市販のものを使えばこの手間はかからないのでは?と思われるかもしれませんが、この「こもを編む技術」さえも今では途絶えようとしている大切な技なのです。

山形さんと共に作業を見守っていたのは白木駒治さん。山形さんにとって、“お茶の師匠”である白木さんの指導のもと、昔ながらの方法を受け継いでいます。

私たちも、こもをヒモでつなぎ、木組みに被せる作業を手伝わせていただくことに。

高校生のみなさんとも息を合わせて、こもを固定していきます。

こもの上に雨が降ると雨露が藁の甘みを吸って葉に落ちるため、市販の遮光ネットよりも美味しいお茶に仕上がるのだとか。

昔ながらの手仕事は、すべてにこういった意味を持っています。常に自然と共にある先人の知恵の偉大さに、あらためて感銘を受けました。

こもの屋根の下のお茶たちは、柔らかい日差しを受けながらも適度に影が落ち、見ていてとても気持ち良さそうでした。澄んだ風が吹きわたっていました。