毎年3月から5月にかけて滋賀県近江八幡市の各地では、大小200基を超える松明(たいまつ)を結い、火を放って神様へ奉納する「火祭り」が行われます。これらは1000年の歴史を持ち、「近江八幡の火祭り」として国の無形民俗文化財にもなっています。 今週末3月16,17日は、代表的な火祭りの一つである「左義長まつり」が日牟禮八幡宮で開催されます。 今回は、近江八幡で受け継がれる伝統を次世代に伝えていきたいと、昨年ラ コリーナ近江八幡で開催した「たいまつエキシビション」に参加した高校生の思いをお届けします。“伝統を継ぐこと”に真っ直ぐに向き合い、一生懸命に行動し、若い感性で発信する姿はとても頼もしく、大きな希望を感じていただけるはずです。
私は近江兄弟社高校3年の西川天音です。「滋賀の良いものを発信したい。 若者が伝統を大切にする気持ちを広げたい」という思いから、ラ コリーナ近江八幡で開催された「松明エキシビション」に関わらせていただきました。より多くの人たちに、特に私と同世代の若い人たちに向けて、この取り組みや近江八幡の松明の文化について知ってもらうため、動画や写真で情報発信をすることにしました。将来映像製作に携わりたいという友人や高校の写真部を巻き込んで、「松明結-YUI-プロジェクト」を立ち上げました。 私はこれまで、近江八幡のお祭りの存在、そして“松”に“明”と書いて「たいまつ」と読むということすら知りませんでした。そんな私が松明に出会ったきっかけは、まちづくり会社まっせへのインターンシップ。 大学で観光を学ぶことを決意した私は、素敵な地域資源が残る身近な地域から観光にアプローチしたいと思い、近江商人の精神が受け継がれる近江八幡のまちづくりに関わろうと考えました。 事前に松明づくり特有の“男結び”やしめ縄の作り方を練習するなどして、近江八幡の地域の方々や伝統に、実際に触れる機会をたくさん設けました。事前会議で聞いたある言葉がずっと心に残っています。 「松明を結い上げる作業を通して、私たちは仲間意識を再確認するんだ。それが松明結だ」という「文化遺産としての松明を次世代へ贈る会」副会長・大西さんの言葉です。 私が学年やクラスの枠を越えて一つのプロジェクトを立ち上げたことも、“結”なんだなと実感し、自分のプロジェクトに誇りを持つことができました。また、贈る会の方が高齢化しているので、どうにかこのプロジェクトを通して、地域の方と高校生との“結”をつくらないと!という使命感が生まれました。 そして、たいまつエキシビション当日。私たち高校生も朝から松明づくりに参加させていただきました。 各町の松明の違いを知れば知るほど奥深さに惹かれました。北之庄町の松明には“でんでん”という模様を刻むのですが、この作業には昔畑仕事に使っていたという道具が使われ、先人の知恵や歴史的背景を感じました。 各町のみなさんが、自分の地域の松明に誇りを持っていらっしゃるところも素敵だと思いました。 エキシビション当日は、町など関係無く全員で大きな松明を立てたのですが、「うちの立て方はこうだ」と主張しながらも、協力し合って松明づくりをするみなさんを見て、男らしさや情熱を感じました。 贈る会のみなさんは私たちより長く生きた分だけ知恵を持っていらっしゃるので、松明へのこだわりが強く、お話も長かったです。しかし、「次世代へ松明を繋ぎたい」と強く思っておられる方ばかりで、私たちに対していつも優しく笑顔で接してくださいました。特に印象的だったのは、男子メンバーが松明を結いを教わりながら「師匠と弟子」と言い合って、とっても仲良くなってくれたことです。笑顔が絶えませんでした。 しめ縄やミニ松明づくりなど、お客さんが参加できるワークショップもにぎわいました。 私がチラシを配りながら自分の言葉でプロジェクトについて説明していると「高校生が地域に関わっているのがすごい」と言ってくださいました。当日はるばる東京からカメラを持って来てくださった方は、素敵な写真をインスタグラムに投稿してくださいました。「今後も応援しているよ」とメッセージもくださり、とても嬉しかったです。 また、小さな子どもに高校生メンバーが男結びを教える姿や若い女性がしめ縄を楽しそうに編む姿をみて、この文化を継ぐことの可能性を感じました。 今回は私たちは、松明制作部隊・動画製作部隊・写真部に分かれて活動しました。一人ひとり楽しみながら、松明を通して文化や伝統の大切さを学べたと思います。 「この機会がなければ松明には関わらなかっただろうし、地域と交流できて嬉しかった」 「最初は興味がなかったけれど、今回の活動を通して地域との繋がりを大事だと実感した」 というメンバーからの感想をもらい、胸が熱くなりました。 「松明結-YUI-プロジェクト」の最大の目的である「伝統と、人との繋がりを結い上げる」ということを実践でき、とても達成感を感じています。 また、プロジェクトメンバーの一人ひとりのやりたいことや将来の夢を語り合い、みんなでワクワクを共有することができました。 年齢を越えて地域のみなさんや文化に関わることができて感謝しています。本当にありがとうございました!