第7回アジア農村社会学会(ARSA)国際会議が2024年9月7日~9日 京都・龍谷大学にて開催されました。
アジアの農村部の持続可能な未来のため、地域が抱える課題や農業という視点から議論され、学会の会長 京都大学 大学院農学研究科 教授 秋津先生と学会の参加者11名(中国、台湾、日本、ドイツ、タイ、イタリア)の方々がラ コリーナ近江八幡のスタディートリップに参加されました。
農村といえば、どこか地方のイメージがありますが、私たちの社会を支えているのは農業と人の営みです。
この研修は、お菓子屋のたねやグループが取り組む農業と地域社会の中でどのような取り組みをしているのかを知っていただく研修です。
研修プログラムでは参加者による発表が行われました。
たねやグループのサステナブルビジョン「たいせつにするきもち」
たねやグループ 経営本部 本部長 小玉恵
お菓子の原材料は自然の恵みから、豊かな自然と人の営みがあってこそ、私たちはお菓子をつくりお客様にお届けすることができます。
たねや・クラブハリエのフラッグシップ店ラ コリーナ近江八幡では自然を愛し、自然に学び、人々が集う繫がりの場を作っています。
自社のスタッフ、家族、地域の方々や学生さんと共に森づくりや米づくり、伝統文化を通じて自然を学び、季節の山野草を育て全国のたねやの店舗に出荷、展示し自然豊かな近江の景観を発信しています。
お菓子づくりにおいてもフードロスゼロや資源循環、カーボンニュートラルに向けた取り組みを進めています。
米の有機農法と温暖化対策の実証
たねやグループ キャンディーファーム 鬼海航太
近年お菓子の原材料である農作物が様々な理由から良品といえるものが手に入りにくくなっています。その代表的なものがお米です。
地球温暖化、化学肥料や農薬による土壌の劣化、農業従事者の減少と高齢化など課題があります。
栽培期間中に灌水する水位を管理することで、温暖化に対する栽培と有機農業の最大の課題である雑草への課題を解決するプロジェクトを立ち上げ取り組んでいます。
温暖化による品質の劣化、白未熟粒の問題
アジア太平洋気候変動適応研究室 室長 増冨祐司
気温の上昇による米の白未熟粒が多くの都道府県で問題となっています。この問題は、2040年代までに日本の米産業に年間5億ドルの損失をもたらす可能性があります。
白未熟粒の現状の理解とヒントを得るために田んぼで調査を行いました。
・調査結果
白未熟粒の発生には田んぼによって大きな違いがありました。田んぼごとの環境条件に大きな違いがあり、影響しているのではないかと推測し調査を続け土壌温度に変動があることが分かった。
・解決策
水深の調整に土壌温度を下げる効果がある。
気候や社会の変化に農業を適応させるための農家発のイノベーション
東京大学名誉教授(農学生命科学研究科)小林和彦
変化する気候と社会に有機栽培米づくりで取り組む舘野さんは、1992年から有機栽培に取り組み、年々圃場(ほじょう)を拡大され(2023年15ha)、代かきや深水田植えなどで雑草をおさえることに成功されています。
収量は有機栽培3~4年目は慣行農業の6割ほどですが10年継続すると収量は8割からほぼ同量です。
有機栽培の水田では土壌の上部に有機物が豊富に含まれるトロトロ層があり、それが雑草の発生と成長を抑制することが分かってきています。
スタディートリップを終えて
農業においての気温の変化は土壌の温度、最高気温(日中の気温)、最低気温(夜温)、水温、また生長段階のどのタイミングで高温が品質に影響するか、など様々な条件があります。
田んぼの雑草も種類があり、それぞれの植物の性質にあった抑制の方法があります。
私たちは実際の圃場で先生方から指導いただき、環境負荷の少ない有機栽培で気候変動に対応する栽培マニュアルを作成し地域で広めていけるよう近江八幡市と進めています。
農の課題は世界共通の課題です。私たちの取り組みをより多くの方々に知っていただき共に考えて行きたいと感じました。