Japan Food & Agriculture Summit(JAFAS)2024 レポート
Text : 大村啓子(経営企画室)
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JAFASの概要
たねやが参加するNPO法人NELIS(ネリス/Next Leader's Initiative for Sustainability)は環境、サステナビリティ、社会イノベーションに取り組む「次世代のグローバル・ネットワーク」をつくり、若手リーダーの行動力を高め社会の実践的な変革・変容の実現に向けて取り組む活動を行っています。
その活動一つ4Revs(フォーレブス)では世界が直面する「4つの生存課題」である、食糧・水・資源・エネルギーの領域で日本企業と世界各地の社会起業家、サステナビリティの実践者と協働する共創的なエコシステムの構築を目指しています。
2024年11月8日、4Revsが中心となり「再生農業」と「食・農のアップサイクル」を2大テーマとして今後の農業・食料システムの在り方を多面的に議論し、協働を構築するためのサミットJAFAS(Japan Food & Agriculture Summit)のキックオフイベントが開催されました。
たねやもJAFASに参加し様々な企業、関係団体、省庁(農業水産省)、スタートアップなど国内のプレイヤー約140名と未来に向けた議論を交わしました。
日本が直面している食、農に関する課題は多岐にわたっており解決のためには新しい農業・食料システムを実現することが急務です。
第1部:再生型農業
再生農業に関する世界と日本の現状
▷サントリーホールディングス「世界と日本の取組の現状」
安東祐一郎氏(サプライチェーン本部グローバルソリューション部)
▷ボストンコンサルティンググループ「グローバル動向およびCOP会議の動き」
佐野徳彦氏(パートナー&アソシエイトディレクター)
「みどりの食料システム戦略が目指す日本の食料・農林水産業」
久保牧衣子氏(農林水産省、大臣官房、みどりの食料システム戦略グループ長)
基調トーク「再生農業~ネスレの取り組みと教訓〜」
Magdi Batato氏(Former Executive Vice President,Head of Operations of Nestle)
ケースの紹介
▷ファームノートホールディングス小林晋也氏(代表取締役社長)
▷「Tree & Norf」徳本修一氏(代表取締役)
現在私たちは地球1.7個分の資源を使用する生活をしていると言われており、有限な自然資源をこのままのペースで使い続けることはできません。地球で起きていることに正面から向き合い解決していかなければなりません。
世界規模の視点では、原料産地で起きる気候変動による自然災害の影響は深刻です。気候変動の原因は温室効果ガス(GHG)であり、そのGHG排出量の4分の1を農業分野からの排出が占めています。
このことからも企業が農業に関わり気候変動の緩和を進める重要性が分かります。
一方日本の食料・農林水産業は気候危機、災害の影響のほか生産者の減少・高齢化、地域コミュニティーの衰退等、持続可能性の観点から多く課題を抱えています。
温室効果ガスの排出においては、農業分野からの排出の3分の1は化石燃料の使用、残りの3分の2は水田や畜産から発生するメタンガスなど生物の働き、つまり農林水産業そのものから排出されています。食料の安定供給も重要課題の中で両立していく難しさがあります。
しかも、農業は気候危機の影響をもっとも受ける産業であるため気候変動対策、生物多様性保全には自ら取り組んでいかなければならなりません。
世界でも様々な方針を掲げ取り組まれていますが日本の高温多湿な気候ならではの課題があり海外のケースを拡大することではなく独自の再生型農業を進めていくことが必要です。
第2部:食・農のアップサイクル
アップサイクル事例
海外の事例
フランツ・ダーズ氏(4Revsグローバルチームコーディネーター)
国内の事例
ASTRA FOOD PLAN株式会社
〜食品乾燥・殺菌装置「過熱蒸煎機」とアップサイクルパウダー
『ぐるりこ®』で「かくれフードロス」問題を解決!〜加納千裕氏(代表取締役)
参加企業によるリレートーク
▷明治ホールディングス~ひらけ、カカオ〜
桧垣薫氏(グローバルカカオ事業本部カカオ開発部CXSグループ長)
▷井村屋グループ株式会社~食品ロスアップサイクルへの挑戦〜
北将之氏(井村屋スタートアッププランニング株式会社)
▷たねやグループ~小豆の皮から新たな価値を生みだす〜
小玉恵(執行役員/経営本部本部長)
世界で廃棄される食糧、フードロスは約13億トンです。これは食糧生産量の3分の1にあたります。このフードロスに関わる生産、廃棄コストは年間9,400億ドルといわれています。
経済的損失だけでなくフードロスに関わる温室効果ガスの排出も深刻です。フードロスには、製品になった後の廃棄だけでなく製造過程で出てくる残さと呼ばれるものも含まれます。
食料自給率の低い日本においてはもちろん、今後世界で起きる食糧危機に向けて残さをアップサイクルし食糧として利用することが私たちの食や農の課題を解決する重要な方法の一つとなります。
事例紹介では、野菜の端材や飲料残さなどを乾燥粉末に変えて原材料としてアップサイクルする食品乾燥・殺菌装置「過熱蒸煎機」の可能性について、参加企業のリレートークでは各社の取組について発表されました。
JAFASに参加する意味
たねやグループは農林水産省みどりの食料システム戦略「グリーンな栽培体系への転換サポート」事業を活用し水稲再生型農業の取り組みを行っています。菓子製造時に発生する未利用原料のアップサイクルにも取り組んでいます。
JAFASでは自社のアップサイクル事例を共有しました。
和菓子には欠かせないこし餡の製造過程に小豆皮が残さとして排出されます。この小豆皮はきれいな小豆色をしており、食物繊維も豊富です。以前からこの小豆皮が原材料となり新たなお菓子を作れないかと社内では様々な取り組みをしてきました。
小豆皮は出てくるタイミングで多くの水分を含んでいます。その為小豆皮入り商品の製造時まで冷凍保存をする、もしくは小豆皮を乾燥粉末化することで原材料として保管期間を保たなければなりません。
つまりエネルギーやコストがかかるという課題、そして出来上がった商品に新たな価値が無ければお客様に選んではいただけません。
自社の取り組みは一歩ずつ着実に進んではいますが、私たちが抱えている食や農に関する課題には今の延長線上ではない新たな取り組みが必要です。
この課題は地球のどこかで起こっていることではありません。私たちの地域、企業の課題です。
しっかりと向き合いどのような未来をつくりたいのか、この未来の実現にはJAFASに参加し分野を問わず様々な企業、団体と協働的に取り組み新しい農業・食料システムや新しい価値をつくり自社の取り組みを大きく進めていく必要があると強く感じました。