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2025.03.29 Text : 桂 浩子(広報室)

近江八景 粟津あられ

  • # お菓子のおはなし

和歌に詠まれ、浮世絵にも描かれた景色をお菓子で表現した近江八景は、成安造形大学の学生さんとの共同開発プロジェクトから生まれた詰合せです。
今回は粟津晴嵐(あわづのせいらん)をあらわした粟津あられをご紹介します。

粉山椒をかけてお召し上がりいただく粟津あられは、香ばしいあられで新緑の松葉を表現した一品。
かつて旧東海道沿いには500本を超える松の並木があったとされ、歌川広重の浮世絵にも松並木を行き交う人々が描かれました。〈近江八景〉に選ばれたのは晴れた日、強い風にざわめく松の様子。粟津あられはあおさ入りのあられで松の緑を、吹き抜ける風をさわやかな辛さの山椒であらわしています。

昨年、商品の開発を進めるにあたりたねやのお菓子を知っていただこうと学生さんへの試食会を行いました。
ふくみ天平にたねやカステラ、本生羊羹、干菓子など個々のお菓子に「おいしい」というお声をいただく一方、「あんこばかり、甘いお菓子しかない」とのご意見も。参加したスタッフには衝撃でしたが、率直なご意見をいただけるのも共同開発ならでは。八つのお菓子を詰合せたときのバランスも考えなければいけないと認識をあらためました。その後の開発でも学生さんから「甘くないお菓子も欲しい、食べたい」とのご意見をいただき、粟津あられが誕生したのです。

春、強い風が吹く松並木をあらわした粟津あられ。パッケージにも松葉色の模様を用い、書家 水野恵氏による篆刻風(てんこくふう)の古漢字を配したシールでとめています。

■粟津晴嵐
粟が実っている姿を写生されたものが「粟」の字です。「晴」の字は今では雨が止んだという意味にしか使われませんが、古くは上の部分が天の状態を指し、縦画三本は雨が降っているという意味だったのです。さて、三つの〇は解読できていませんが、僕は葱坊主で、頭が揃うことを示しているのだと思っています。中国には三以上の数は三で代表させるという癖がありましたので、たくさんのものが頭を揃えて並んでいるさま。「嵐」は本来山冠ではなく艸冠でしたので、そう書いてあります。読めないでしょうが、こういうものを考えるのは楽しいです。
「果想観譜 たねや・クラブハリエのための水野恵作品輯」解題より引用

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