2025.04.08 Text : 桂 浩子(広報室)
近江八景 唐崎あんみつ
- # お菓子のおはなし
和歌に詠まれ、浮世絵にも描かれた景色をお菓子で表現した近江八景は、成安造形大学の学生さんとの共同開発プロジェクトから生まれた詰合せです。
今回は唐崎夜雨(からさきのやう)をあらわした唐崎あんみつをご紹介します。
唐崎あんみつはごろっと大きな寒天に黒胡麻ソースとすり胡麻、クコの実をあわせる一品です。唐崎夜雨は唐崎神社の境内にある松が夜の雨にうたれる景色。歌川広重の浮世絵では湖畔にそびえる大きな松がシルエットで描かれています。
近江八景プロジェクトでは八つの景色それぞれに物語や伝説など様々な要素があることを学びました。要素を絞りこみ、どうお菓子であらわすかは学生さんと頭を悩ませた部分です。唐崎夜雨も開発のはじめのころは松のかたちの最中や黒胡麻の羊羹にくるみを入れて松に見立てるなど、松にちなんだ案が出ていました。
黒胡麻を使い夜の雨を表現した唐崎あんみつは、最後に添えるクコの実にも意味をこめています。
唐崎は万葉集にも詠まれた近江の景勝地。唐崎神社も古くから祓(はら)いの霊場として知られた場所です。こうした点もお菓子にくわえたいと選んだのは赤い素材。厄除けや魔除けの力をもつとされた赤色にちなみ、クコの実を添えることで唐崎とのつながりをあらわしました。
唐崎あんみつのパッケージも景色にあわせた雨模様。右上には書家 水野恵氏による篆刻風(てんこくふう)の古漢字を銀の箔押しで配しています。
■唐崎夜雨
「唐」の字の口の部分は器のことです。「崎」の字は「さき」と訓読みにするものは古漢字にはありません。「夜」は「亦=腋」と「夕=月」の合字です。片腋に月が射す時、それが夜になるのです。「雨」の「:」は雨滴を象っています。左にはさらに雨を彫ってみました。
「果想観譜 たねや・クラブハリエのための水野恵作品輯」解題より引用