「玉ねぎって植物のどの部分を食べてるか知っていますか?」 わたしは今回畑に行き、はじめてその答えを知りました。 2021年4月より、たねや日牟禮茶屋のお食事メニューの一部に「株式会社 坂ノ途中」の有機野菜を使用しています。 坂ノ途中では農作物の販売を主に行なっており、「100年先も続く、農業を。」をコンセプトに生産者と提携し、環境負担の小さい農業を広げるためのプロジェクトを多数展開しています。 農作物や生産する農家の方々の思いを大切にするのは、わたしたちたねやグループも同じです。 坂ノ途中との新しい取り組みについてより深く、お客様にお伝えできるよう、「株式会社坂ノ途中」小野邦彦代表、坂ノ途中の契約農家「HATAKEYA」の川﨑亮太様、たねやグループ 山本直子女将、たねや飲食担当 小林達也料理長で会談を行いました。
「HATAKEYA」川﨑様の畑がある三重県いなべ市での取材で、農業や野菜について、たくさんおうかがいしたお話を3回にわけてお届けいたします。 1回目は、「株式会社 坂ノ途中」小野代表のお話をご紹介します。
Q. 坂ノ途中はどんな会社なのか A. 「事業内容としては新規就農者を中心とした提携農家さんの農作物の販売と環境負担の小さい農業をもっと広めるためにあれこれ行なっています。 社名の『坂ノ途中』には、成長途中にある就農希望者や新規就農者の良きパートナーであろうという願いを込めました。提携農家は約9割が新しく農業をスタートされる新規就農の方々です。環境負担の小さい農業を志す人が増えることで持続可能な農を広めることができるのではないかと考えています。」 Q. 農業について考えていること A. 「農業から生まれる農作物は、自然と人間の結び目だと考えています。みなさんが普段から何気なく目にする野菜で、どんな野菜を選ぶか、なにを善しとするかが自然環境に対する気持ちが表れてるポイントだと思います。 トマトだって人間が贅沢に求めるから、年中甘い赤い大きなトマトがスーパーに並んでいるけど、実際の自然環境に寄り添って栽培すると、四季の温度や室温によって様々な『ブレ』が発生します。 いくら丁寧に栽培しても農産物は生きているのでブレるんです。 例えば7月の万願寺トウガラシと9月の万願寺トウガラシは全くの別物。9月の万願寺トウガラシに7月のジューシーさはないけれど、ゆっくり育った分食べごたえがあります。」 「野菜って基本『根・茎・葉』の部位に分かれているんですけど、玉ねぎってどこの部分を食べてるか知ってますか? 茎って思った方。クイズとしては最高の答えです(笑) 実は玉ねぎは葉っぱの部分を食べているんですよね。年中食べられる玉ねぎですが葉野菜くらい旬があり、新玉ねぎの出荷にはとても気をつかっています。普段良く目にする玉ねぎでもそんなふうに見たことがないから知らないことってほんとに多いですよね。 野菜ってびっくりするくらい季節によって雰囲気が変わります。私たちの自然に近い環境で育てるスタイルの農業ではやはり季節ごとに『ブレ』があります。季節ごとの野菜の顔つきに四季のめぐりを感じていただき、“ブレを許容する”。 それも含めて楽しめる社会を目指していきたいと思っています。 生き物である農産物。野菜の変化で季節を感じられる社会のほうが粋だし、包容力があると思うんですよね。」 「季節を感じていただけるよう、坂ノ途中の野菜を定期購入していただいてるお客様には季節を感じられるものを1つ、『おまけ』でプレゼントしています。通販を始める時に季節の移り変わりを感じてもらえるようなにか工夫は出来ないかと思って発案しました。 畑にいると当たり前のように感じる季節の恵みがお客様にとったらとても嬉しいことだったりする。大根の実や歓送迎会の時期に生のウコン、子どもの日のころにはショウブなど、野菜の一品としてはもらっても困るけどおまけなら嬉しいし、新しい発見にもなるのかなって思ってます。」 Q. 小野代表がお客様に感じていただきたいことは A. 「坂ノ途中の野菜はオーガニックでもあるが“ハンドメイドの野菜”なんです。たねやさんのお店にも一度だけでなく何度か足を運んでもらって、お客様に季節のめぐりを楽しんでもらえると嬉しいです。」 今回お話をしていて“人と自然の結び目が農業”という言葉がとてもしっくりきました。何気なく選んで、何気なく食べている野菜も生きていて四季によって色んな顔がある。 買い物に行った時、「夏の野菜が出てくる季節だな」「今年は野菜の値段が高いな、なぜだろう」というわたしたちの小さな変化への気付きは、実は環境問題にもつながっているということ。小さな変化に気付ける心のゆとりをもつことで環境問題に目を向けるきっかけになるのではないかと感じました。 次回は坂ノ途中契約農家「HATAKEYA」の川﨑様のお話を紹介したいと思います。お楽しみに。