たねやの季節をめぐるお菓子たち。
今回のラ コリーナ日誌では今秋、新発売された「福寿芋(ふくじゅいも)」をご紹介します。
たねやでは秋の季節菓子として、なると金時を使った「たねや長寿芋」を1994年より販売してきました。
平成初期のこの頃、『さつまいもをまるごと食べているかのようなお菓子を作りたい』という想いから、食べ応えのある120gという大きなサイズのたねや長寿芋が誕生しました。以来、長年にわたりたねやの秋を代表する季節菓子となりました。
▲販売当時のたねや長寿芋
時は変わって令和3年10月、たねや長寿芋の製造を終えた工場では商品の見直しを検討する声があがっていました。
環境への負荷を少なくする取組みが社内でも進んでいた中で
「世の中ではフードロスが問題となっているので、たねや長寿芋の製造工程でどうしてもロス(商品にならない部分)がでてしまう」
「長年見直していなかった製造工程を見直し、ロス0%をめざそう」
そんな想いで商品の見直しプロジェクトが始動しました。
まずはロスが出ない形状と工程を意識して検討が始まりました。
たねやでは、店舗の商品ケースに並んだときに見えるお菓子の表情を大切にしています。たねや長寿芋は商品の天面をワイヤー状のもので生地の一部をカットし、お菓子に表情をつけていました。天面の表情は、当時特にこだわった部分でもありましたが、カットされた生地はそのまま廃棄されていました。1個あたり廃棄する量は微量でも、1シーズン分の廃棄量はかなりの量になります。
▲生地の天面をカットして表情を出していた
まずはその形状から見直すことになりました。
商品の生地をカットせず、さつまいも餡を生地で包んだまま表情をつけたい…。
現場の責任者2人は開発当時を振り返ってこう話します。
「正直、すごく悩みました。秋を代表するお菓子だったので形はもちろん味もたねや長寿芋を超える商品にしなくてはいけない。はたして出来るのか…」
「機械トラブルも多い商品だったので作業性の向上も同時に考えていました。期間も限られていたので機械メーカーの方と相談しながら進めました。」
改良前の製造ロス率は4.6%。そのロス率を0%にすることを目標に改良を進めたそうです。作業効率を考えて機械で出来る形をたくさん考えたことや、形ができても焼いた時に割れない生地。ロスの出ない工程、機械の選定など繰り返し何度もテストを行ったそうです。
「急ピッチのプロジェクトだったので検証してから機械が納品されるまで実際の製造ライン機での試作ができなかった。ある程度は経験値や想定で判断と決断をしないといけなかったので正直不安でいっぱいでした。」
お話を伺う中で2人とも笑顔で話をしてくれますが、限られた時間の中で機械の選定から商品の見直しまで大変な道のりだったことが伺えます。
機械が導入され、製造テストを行う中で「これはいける!」と自信がもてるようになったといいます。製造工程が大きく変わり、作業内容がわかり易くなったことで以前に比べ人員も削減できました。
また、たねや長寿芋と原材料の配合が同じにも関わらず、商品の『芋感』が増し、よりさつまいもを感じていただけるお菓子が完成しました。
「配合で変えたのは天面に黒ごまをあしらったくらい。以前と同じ配合であるが、輪切りになったことで食べ口が変わり、さつまいもの味がより感じられる商品になった。見直しのきっかけはフードロス削減だったが、沢山悩んで改良したことでより美味しいお菓子をお届けできることができる。」
そう語る2人の表情は安堵感に溢れていました。実際に製造を始めてからの製造ロス率は1%以下になっているといいます。
福寿芋の販売は2022年8月23日にスタートしました。実りゆく秋にむけて多くのかたに手に取っていただけるお菓子になりますようたねや全店、公式オンラインショップ にてご用意しています。
たねやではこれからもフードロス削減に向けた取組みと、お客様に安心してお召し上がりいただけるお菓子をお届けしていきます。
▼福寿芋ができるまでを動画でご覧いただけます
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