
2025.11.08 Text : 山﨑 恵理子(LAGO琵琶湖の森)
LAGO生き物だよりvol.4
- # 水と森
季節が進み、爽やかな風に少しずつ秋の気配を感じるようになってきました。
LAGO 大津の「琵琶湖の森」では、真っ赤に染まったヒガンバナの蜜を吸うナミアゲハの姿も…。
今回は、秋の「琵琶湖の森」でチョウたちに人気の植物をご紹介します。

ツマグロヒョウモン(オス)

アオスジアゲハ

ナミアゲハ
「琵琶湖の森」の雑木林エリアに咲く白い花に、たくさんのチョウが集まっています。
この植物は「ヒヨドリバナ」といって、日本に昔からある植物です。山野に自生し、夏から秋にかけて花を多数咲かせます。
ヒヨドリバナはチョウたちに大人気で、10月には毎日のようにいろんなチョウがやってきては夢中で蜜を吸う様子が見られました。まるでチョウの楽園ですね。

まん丸の大きな眼が特徴的なセセリチョウの一種「チャバネセセリ」です。自分の背丈より高く口吻(こうふん)を伸ばす様子は、まるで一本釣りをしているようにも見えて面白いです。
チャバネセセリが蜜を吸っているこの植物は、その名を「キツネノマゴ」といいます。
諸説ありますが、ふさふさした穂を“キツネのしっぽ”そして小さく可愛らしい花を“孫”に見立てて名前がつけられたのではないかと言われています。
キツネノマゴも昔から日本に自生する野草です。小さな花はセセリチョウをはじめ小さなチョウたちに大人気で、今の季節に貴重な蜜源(みつげん)の一つです。
※蜜源…チョウが好んで蜜を吸いに訪れる植物。

翅(はね)の波模様が特徴的なシジミチョウ、「ウラナミシジミ」です。腹部の先端を植物の蕾にくっつけて、産卵をしています。

ウラナミシジミが産卵していたこの植物は「ヤブツルアズキ」といいます。ウラナミシジミの幼虫はヤブツルアズキなどマメ科の植物の花や蕾を食べるそうです。そのため、親のチョウは蕾に卵を産み付けていたのですね。

ちなみにヤブツルアズキは、和菓子に使われる餡子の原料「小豆」の原種であると言われています。熟した実から出てきた種は、確かに小豆にそっくりです。
※原種…品種改良以前の、もとの植物。

作業中に、大きなチョウがふわりふわりと優雅に飛んでいる様子が目に入りました。追いかけてみると、その正体は「アサギマダラ」!「琵琶湖の森」に来てくれたらいいなと、スタッフ同士で話していたところでした。
アサギマダラは春に北上し、夏場は標高の高い場所で過ごし、秋になると暖かい南へ移動する、旅をするチョウです。なんと海を越えて、台湾まで飛んでいくものもいるそうですよ。旅の途中で「琵琶湖の森」に寄り道してくれたようです。

アサギマダラが寄り道をしてくれた大きな理由が、秋の七草の一つである「フジバカマ」という植物の存在です。
アサギマダラはフジバカマの花が大好きなので、やってきてくれることを願いながら3月に苗を植え、生長を見守ってきました。

イチモンジセセリ

ツマグロヒョウモン(メス)
順調に生長し立派に大きくなったフジバカマの花は、アサギマダラはもちろん他のチョウたちにも大人気で、連日たくさんのチョウで賑わうスポットとなっています。
このように、「琵琶湖の森」では可憐な秋の野草の周りを、チョウたちが生き生きと飛び回る姿がたくさん見られます。
先日あるお客様より「チョウがたくさんいてとても良いところですね。大津のこんな街中に、こういった場所があることはとても貴重ですね。」
とうれしいお言葉をいただきました。
一人でも多くの方にそのように感じていただけるように、日本に昔からある野草、そしてそれに集まる生き物たちを大切に、今後も近江の里山環境をみんなでつくっていけたらと思います。
.jpg)


