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ラ コリーナ日誌
人と自然が主役の建物です(4)
Text : 事業部
- #キャンディーファーム(農藝)
ラ コリーナ近江八幡のベースキャンプとも言える、たねや農藝。建築設計をしてくださった京都大学准教授 小林広英先生へのインタビューです。
第四回目は、建物を作るプロセスと、設計アイデアについてです。 ※第三回目の内容はこちら。
※次回、最終回は、みんなで作った建物であること、そして、風土建築につながるお話です。お楽しみに。
■社長との対話でつくる建物
小林 | 建物の設計では、山本社長との対話で生まれるキーワードを手がかりに詳細設計を進めることが多かったです。 |
小林 | 私の志向としても、なるべくシンプルに、素材感を活かした設計を目指しました。一方、山本社長も、鉄はさびてもいいんだということを言われる。 |
― | 小林先生も、そういった使い方は良いというお考えでしたか? |
小林 | はい。その感覚はわかります。普通ペンキを塗るところをあえてしない。そのような素材の扱い方や使う場所を考えながら設計しました。 |
小林 | 素材を活かす設計は経年変化の状況も評価するエイジングの作法です。勝手な想像ですけど、お菓子にも通じるところがあるかなと思ったり。 |
― | そうですね。うつりゆくもの、うつろうものに、美しいなと思う感性は、おそらくあるのではないでしょうか。自然を感じさせる、ゆらぎのあるものにも惹かれているように感じます。 |
小林 | そうですね、いつも社長は「店舗みたいにするな」「きれいに作りすぎるな」と。そういう、打合せで出てきたキーワードを自分で再解釈しながら設計を進めました。 |
小林 | 実際の素材選定では、アキムラ フライング・シーの中谷さんや西野さんと議論したプロセスも大きかったですね。インテリアを担当された匠プランニングの土井さんとの調整も重要でした。 |
■建物への不思議な工夫
小林 | あとは、さっきのヒューマンスケールの話に関連していうと、アプローチは妻側だけこちらに向いてコンパクトに見えます。全体のボリュームはその後ろに隠れている。ちょうど森の中に小さな家が二棟あるような感じです。 |
― | 遠くから見たときは、あえて、小さく見えるようにと考えて。 |
小林 | 建物に近づくにつれて全体が見えてくる。 |
小林 | また内部空間の工夫としては、等間隔に配置された柱を少しずつずらしています。ほら、柱ずっとずれてるでしょ。 |
― | ずれてる?あ、本当ですね。 |
小林 | あちら側が狭くてこちら側が広い。広い部分を見ることで全体的に広がりを感じることができます。多くの人が建物に入ると「思ったより広いですね」とおっしゃるのは、このような仕掛けがあるからです。 |
― | なるほど。中の空間を広く見せるために柱を… |
小林 | あえてずらしながら配置する。 |
― | はい。建物自体もカーブしていますから、とても複雑なことになっています。 |
小林 | 栽培棟の入口を見てください。入口の前に障壁がないでしょ。ずらすことで、正面がスカーッとしています。 |
― | 扉はあくまでも真ん中なんだけれど、ということなんですね。 |
小林 | 機能的にもモノが入れやすいとか、視覚的にも抜けていて気持ちがいいです。 |
― | 言われてみると、あっ、と気づくのですが。体感としては、なんというか、さりげないですよね。ごくごく自然で心地いいです。 |
小林 | 柱を真ん中に置いていたら、全然違うと思います。 |
― | おそらく、もっと窮屈でカチッとした印象になるんでしょうね。 |
小林 | すごく固い感じになる。 |
― | そのさりげないのが、成功というかんじでしょうか。 |
小林 | そうですね。でも、中谷さんや工事の方は、だいぶん苦労されたので、何きれいなことばっかり言って、と言われると思いますが(笑)。 |