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ラ コリーナ日誌

ものづくりの想いと精神(2)

Text : 事業部

  • #メインショップ〈草屋根〉
たねやの店舗壁面を彩る大きな和紙を制作してくださった、和紙デザイナーの堀木エリ子先生へのインタビュー。 第2回目(最終回)は、和菓子にも通じるものづくりの精神性について。 ※第1回目の内容はこちら。

■いのちあるもの

和紙を設置されるとき、柱にひっかかる場面があったのですが「無理させたからなおしてあげて」とおっしゃっていました。
堀木 痛そうだったでしょう(笑)。
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堀木 お菓子には実のなる木が大事だと、先ほど山本社長もおっしゃっていました。木でもね、声をかけた木はすごく実るし、かけてない木は実らないということもあったりします。クラッシック音楽を聴かせてあげたらトマトも甘くなる…なんて、おおよそ信じられないことですが、そういうことってやはりあると、私は思うんです。和紙も生きている木からできたものなので、やはり痛そうだなと思ったらなおしてあげないといけない。そこを丁寧にすると暴れないわけですが、そういうところを放っておくと紙自体が暴れるんですよ。つまり反ってしまったり、そこに皺が入ってしまったりする。ちゃんと手当てをしてあげるということがとても大事ですね。それはものに対しても、人に対しても同じですね。
作業を拝見していて、単に皺が寄ってしまうということ以上に大切にしてらっしゃる様子は、先生やスタッフの方々からとても伝わってきました。
堀木 より不純物のない白い紙を求めるために、職人さんたちが冷たい水に手を浸しながら塵や砂粒をひとつひとつ取りのぞきます。そしてやっと私たちが紙を漉けるんです。すごい人の手と想いが積みかさなって出来上がるものなので、大事に取り付けないといけないし、大事に使っていただけないといけない。ものに対する背景がわかってもらえると、そういう目で見てくださって大事にしてもらえる。するとそれが残っていく。残っていくということは伝統が継承されていくっていうことなので、どの瞬間にも気を抜いてはいけないんですよね。すべて同じ筋で、ぶれずに。どの段階をピックアップしてもそうでなければ本物にはならないんだと私は思います。“想い”ですかね、手づくりのものって。そこに心があるから面白いのです。
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■日本の精神性

和菓子と和紙の世界には、伝統的なものとして、通じるものがあるのではないかと感じます。
堀木 和菓子も四季を愛で、四季に応じた楽しみ方をしますよね。日本人の“四季に対する意識”というのは、“うつろいを楽しむ”ということ。そういう意味では日本の和紙も同じように、季節のうつろいを障子というフィルターを通して部屋の中に入れていくということでもあるし、陰翳礼讃、時間軸にとってもそう。ものすごく共通点があると思います。
そういうことを意識せずに来られたお客様にも、何か感じるものがあるのではないかと想像しています。
堀木 自然を愛でる感覚や、日本の美学そのものがうつろいを愛でるということに繋がりがありますので、お菓子というモノとして四季折々に感じるものと、時間軸として演出するものとの違いはありますが、必ず空気感や気配というものが通じ合います。

■残さなければならないもの

店舗の壁には和菓子の木型をディスプレイしています。木を彫る職人さんがどんどんいなくなっていることを社長が話しをしていていましたが、それにもとても共感されていました。
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堀木 そうですね。和紙の世界も同じように道具を作る職人さんさえもいなくなるという状況なので。昔から日本人が歩んできた“日本のものづくりの記憶”というのは大事なものだと思うんですね。なぜなら、ものづくりの背景には必ず“人の想い”や“職人の精神性”というものがあるんです。祝い事につかうお菓子は、おめでたい形をしていたり。松や鶴亀にしても、想いというのがあるでしょう。そういう意味合いをちゃんと伝えていくためにも、残さなければいけないものの一つだと思いますよね。
和紙に関しても、残さなければいけないと。
堀木 和紙の場合は、白い紙が神に通じるという精神性があります。白いペーパーの紙はゴッドの神に通じるっていうことですね。それは言い換えると、白い紙が不浄なものを浄化するという考え方です。私たちは祝儀袋として、お札を白い封筒に入れて人に渡しますが、これはお札を浄化して人に差し上げるという行為ですし、たとえばお菓子を人に贈る時に用いる熨斗紙なども、品物を浄化してから人に差し上げるという行為なんですね。人が人を思う気持ちの表れとしての真っ白な紙が、その精神性の象徴だったわけです。おもてなしの根底なんですよ、白い掛け紙をして人に渡すということは。お菓子ですとか、人と人を繋ぐものと和紙というのは、昔から密接に繋がっているわけです。
根っこの部分で繋がっているんですね。日本の精神性というもので。
堀木 品物を包装して人に差し上げるというのは、西洋では元々なかった文化です。そこにさらに白い掛け紙をするというのは、まさに浄化してから人に差し上げたいという心と心を交わすための精神なのです。
そういったお話をうかがうと、和紙に包まれたこの空間で和菓子をお届けすることに、深い精神性を感じます。
堀木 心を通わせる場としてこのような空間があり、その環境の中でたねやさんのお菓子をお求めいただく。昼と夕方では異なる表情になると思います。訪れる時間によって、皆さんにも楽しんでいただければと思います。
_MG_1619   日本の精神に価値を見出し、現代のクリエイションとして世に問うあり方。使命感や覚悟をもった堀木先生の姿勢、ぶれないヴィジョンをまっすぐに指し示すリーダーシップに、たねやの世界観と相通じるものを感じずにはいられませんでした。 そして何より作品の美しさ。自然の樹木や草木を素材に、たくさんの人の手で作りあげられた作品は、お菓子の空間をあたたかな雰囲気で包んでくれます。 和紙と和菓子。日本的な美意識を、自然に寄り添うあり方を、どうぞ存分に味わってください。そしてものづくりへの想いと精神を感じてみてください。 ラ コリーナ近江八幡はさり気ない極みがただよう空間です。どうぞご体感ください。