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ラ コリーナ日誌
永源寺、さらに北之庄へ。
Text : 國領美歩(広報室)
- #キャンディーファーム(農藝)
滋賀県東近江市山上町(旧永源寺町)には、私たちのお菓子に使うよもぎを無農薬で育てる自社農園「たねや永源寺農園」があります。
まわりは一面に広がる田んぼ。その一角に青々とした葉が茂るよもぎ畑があります。
畑では約20人が丁寧によもぎを摘み採っていました。
摘み採ったよもぎは、選別しながら茎から葉を落とします。使えない部分を瞬時に見分けるのだそう。10年以上、この作業を続けてくださっている方もおられ、まさに熟練技!
「苦そうやのにねぇ」
虫食いの葉を手にお一人がつぶやくと、みなさんも同意して大笑い。素早く無駄のない作業の中にも、柔らかであたたかな空気が流れていました。
少し離れた畑では、5人ほどのスタッフが草取りの真っ最中。
「草が生えてくると、よもぎが草に負けて弱ってくる」といい、とても大切な作業です。草取り用のカマを手に、みなさん黙々と手を動かしておられました。
きれいに草を除いても、また一週間ほどで細かな芽が出てくるのだとか。暖かくなり、よもぎが新芽を出す頃になると、同じく雑草もどんどん元気になります。
土からはむっとした熱気が上るなか、何より手がかかる「しんどい作業」がこれからほぼ毎日続きます。
「いろんな目に見えん仕事があるんですよ」
親子でよもぎ作りに従事してくださっている方がおっしゃいました。
自然の恵みである素材がないとお菓子はできません。その素材は、生産者の汗と苦労によってできています。たくさんの人の手を介して大切な原材料として私たちのもとに届きます。
小豆、お米、卵…それぞれの素材を手塩にかけて作ってくださる方々を思いました。
4月中旬、日ごろ永源寺農園で働くみなさんへ、つきたてのよもぎ餅を振る舞う機会がありました。
「よいしょー!よいしょー!」
たねやの和菓子を取り仕切る工場長や職人が杵を振るい、農園の作業所にはにぎやかなかけ声が響きました。
「こんなんしてもらうの初めてやわ」
「つきたてのお餅は柔らこうて、美味しかった」
「よもぎのええ香りがしました」
日ごろの感謝を込めてついたよもぎ餅を、おいしそうに喜んで食べてくださいました。
1日続く外仕事の合間には、よもぎ畑のわきにみなで並んで一服。
腰をおろして汗をぬぐうと、すうーっと涼しい風が通ります。
ここ永源寺のおだやかさと美しさ、そして何より澄みきった空気が健やかなよもぎを育てているのだと実感しました。その風土を次の世代に、これからも守って行きたいと強く思いました。
みずみずしく茂るよもぎは太く力強いけど、柔らかい。しなやかさが見た目にも伝わってきます。永源寺農園のみなさんがよもぎに向き合う時の優しい眼差しに、「手塩にかける」の本当の意味を教えていただいたような気がしました。
葉にはまだ朝露が残り、水滴がきらきらと輝いていました。本当に美しく、溢れる生命力を感じました。
その生命力がお菓子に吹き込まれるのです。
以前、海外から仕入れていたよもぎに多くの農薬が使われていることを知った先代から始まった永源寺農園。その精神は今、近江八幡市北之庄のラ コリーナ近江八幡に繋がっています。
原材料があってはじめてお菓子ができる。「一番大切なものは原材料である」と、菓子舗としての原点に戻るきっかけの場所が永源寺農園です。
手塩にかけて作っていただいた材料は無駄にすることなくお客さまに届ける。それが私たちのお菓子作りです。
ラ コリーナ近江八幡では、私たちが自ら野菜やお米を育てることで農家の方の気持ちを知り、学ぶきっかけにしたいと考えています。
永源寺から繋がる「手塩にかける」大切さを忘れることなく、これから、進んで行きます。
※あわせて「素材をめぐる旅」もご覧ください。